準備運動
よろしくお願いします
土台の上で両者は持ち武器を取り出す。審判をしてくれるのはマリア。グルテスは二人をじっくりと見る。両者がどのような戦いを見せるのか見ものだった。
「それでは、準備運動兼ねて試合を始めます。両者、構え!」
ダンゲルは突きをするかのように構える。エルピオンは剣道をするかのように構える。
「それでは、準備運動兼ねての対戦を始めます。試合、開始!!」
マリアの合図で二人は地面を蹴る。
◆❖◇◇❖◆
その頃、国王のパレードの先頭を任されたこの国で一番強い男。騎士王ヘルズは考え事をしていた。
「騎士長、どうしたんスっか?考え事なんてして」
この男、騎士王の右腕とも呼ばれる雷切りのサンデス。彼は雷属性であり、落雷を切るほどの力を持つ者。ヘルズにタメ口なのは昔馴染みという特権を持っているのだからだ。
「少し気になることがあってな」
「もしかして、あの時横切った者たちか?そいつらのことなんて気にするなよ。お前はダンゲルとの戦いに集中してろよ。騎士王様♪」
「お前な…いくらなんでもまたあいつが出てくるわけが無い。あんなに俺に惨敗したんだ。いくらなんでももう一度出てくることは無い」
「でも俺、あいつ見かけたぞ」
「…そうかよ」
ヘルズは聞き流すように答える。
「なんだよ。もう一度勝負したくって来たかもしれないのによ。それを無視するなんて、残念だよ」
ふん、とヘルズは不機嫌になる。その反応に、顔には出さないが、オロオロと不安そうにサンデスを見る。
すると、ヘルズの馬が耳をピクピク動かす。
「あれ?様子が変わったな」
「これは何かが起こるサインだ」
ヘルズは部隊を止めるために、左手を挙げる。その合図に、全部隊が止まる。その様子に、民はザワザワと煩くなる。
「ヘルズ!何事だ?」
ヘルズは何も答えずに、周囲を見渡す。
「サンデス!」
「わかってるよ!」
サンデスは跳ねて、空中浮遊する。周囲を見渡すと、一時の方角に煉獄の炎のような火が飛び交っている。
サンデスは馬の背に戻ると、ヘルズに報告。
「一時の方角に誰かが戦っているようだよ」
「そうか、誰だか分からないか?」
「そこまでは分からないよ。炎のせいでよく見えないからさ」
「そうか、ならいいな」
「そうそう、早く行くぞ」
そうサンデスが言うと、突然ヘルズの馬が暴れ出す。
「おっと!」
立ち上がったり後ろを蹴ったりする。この動きは今までに無い動きだ。
「どうした?!落ち着け!」
必死にあやすが中々落ち着かない。やっとの思いに落ち着いた馬からは大量の汗が吹き出している。酷く興奮している。
「ヘルズ、大丈夫か?」
「ああ、何とかな」
ヘルズが安心しきっていると、空から何かがすごい勢いで落下してくる。民は突然のことに焦り始める。
「今度はなんだよ!」
「こいつは…」
砂煙が晴れて姿が見える。飛んできたのはダンゲル自身だった。体からは鮮血が溢れている。
「ヘルズ!こいつダンゲルじゃないか!なんで飛んできたんだよ」
サンデスをよそに空に炎が現れると、一人の女性が降りてくる。
「ダンゲル!すまない!力を入れすぎた」
彼女、エルピオンは慌ててダンゲルに駆け寄る。彼は血反吐を吐く。
「君、何もんだよ…俺…死ぬのか?……」
かなり弱々しい声でそんなことを言う。
「そんな事言うなよ!お前は死なないよ!」
そして、奥からメイドやグルテスが慌ててやってくる。
「ダンくん!大丈夫かい?」
ダンゲルの姿を見たグルテスは、悲惨な状態に顔を引きつる。コンクリートでできた地面が瓦礫のようになり、周辺は彼の血で汚れている。それだと言うのに、エルピオンは無傷。彼女は怪物なのかチート級の力を持っているのか分からない。だがただ言えるのは彼女があの男よりさらに強いことだけ。グルテスの額から冷や汗が出てくる。
「マリア!どうしよう!ダン死ぬのかな?」
「ご安心ください!医務室に運べば助かります」
「よし、わかった!医務室はどこにあるの?!」
「医務室は旦那様がいらっしゃったテントの裏です」
「わかった!ダン、少しだけ耐えててくれ!」
エルピオンは自分より大きい大人の男を俵担ぎして連れて行く。
「さすが火山龍の頭を持ってきただけはある」
「エルは力持ちですから」
そそくさと彼らは立ち去る。
「ヘルズ、なんだろうな、あいつら」
「俺の対戦相手だろうかね」
「まさかな…」
サンデスは苦笑いになる。
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