送り人
逃げ惑う彼らをセルテ、ラフル、ラファエルが斬り刻む。溢れをガクトとマロが処分する。
「強…」
「もともと人殺しの集団だからね。こういうのに慣れているんだよね」
「そうなんだ…」
普通に話すヒュリーにエルピオンは苦笑いになる。しかしアデルの姿が目撃できず、エルピオンは周りを見渡す。
「あれ?アデルさんは?」
「彼なら…」
ヒュリーが言おうとすると木の上から衝撃波と共に姿を見せる。
「なんか俺の話していたか?」
「何でもないです…」
目線を話すとアデルは困ったような顔を見せる。茶番をやっている間に敵の数が少なくなっているのに気づく。しかし、敵は増えて行く一方。エルピオンはうまく闇の力を使い援護に入る。
「黒炎の舞ー大黒炎ー!!!」
黒い炎を使い一気に数を減らす。奴らは怖気づいたのか姿を消す。勝てたことにエルピオンはドッと力が抜け腰を下ろす。ハルルカたちも思わず腰を下ろす。
「お疲れ、エルちゃん。少し座ってな」
「そうさせてもらいます…」
疲れた様子を見せるエルピオンはふやけた笑顔を見せる。だがすぐにいつもの顔に戻る。ラルカを迎えようと異空間からお城のような門が開かれる。奥には真っ白な光が差してくる。しかし向こうに誰がいるのかわからない。
「みんな…迎えに来てくれたのね」
「行きましょうラルカ様」
「えぇ、千年桜!ありがとう。力を貸してくれて。それとエル…あなたの未来に幸福があることを」
ラルカは泣きそうな顔をしながら笑顔で向かって行く。ずっと逢いたかった人たちが居るのだろう。無邪気な子供のように扉に向かって行く。エルピオンは手を振って送って行く。扉が閉まると白い塊が落ちている。エルピオンはゆっくり立ち上がるとそれを拾う。それはエルピオンたちが探している鏡のかけら。輝くそれを見てから鏡を袋にしまう。
「この場所にあったんだ…。ここに落ちているということは…さっきの奴らの誰かが持っていたのかな?」
「その可能性は低いと思います。持っていたとしてもこの光の力を宿す物を持っていられません」
「そっか…」
エルピオンは少し疑問が増えてしまった。エデルを見ると先ほどからゼルネアスを見たりしている。その時にエルピオンは気づく。エデルの元主人が彼だということに。
「エデル。言ってもいいよ?」
「えっ⁈いや…しかし」
「今行ってよ!私はアデルの人をいつでも呼び出せる訳じゃないからさ」
エルピオンはエデルを押すとゼルネアスの前に出る。エデルは気まずそうにしているがゼルネアスは泣きそうな笑顔を見せる。
「エデル…今更許せとは言わない。お前を封印すると決めたのは俺なんだ。お前の力は未来にきっと役に立つと生き込んでいた。だけどいざお前を封印したあとは俺は弱者そのものだ。死んだ後でさせ、後悔しまくった…。恨むなら俺を恨め。もしくは殴れ」
ゼルネアスは目を閉じる。しかしエデルは何もしてこない。不安に思っているとエデルの瞳から大粒の涙が溢れている。ゼルネアスはそれにギョッとしているとエデルは声を上げて訴える。
「何が恨めだ!ふざけないでくれ!あん時一番苦しんだのはお前だろうが!あの戦線で! たくさんの仲間の命が尽きて…!それでもあんたは戦い続けた!封印された俺は何もできなかった!もう、誰かに置いていかれくるは懲り懲りなんだよ!次置いていったら容赦はしないぞ!クソガキ!」
「お前…俺はそんなにクソガキじゃないぞ!!!!」
「お前にはそれがお似合いなんだよ!」
言い合いを始めるエデルとゼルネアスだが、何だか楽しそうにしているのが周りの空気でわかる。
◆❖◇◇❖◆
喧嘩が落ち着き、エルピオンはゼルネアスに声をかける。
「ゼルネアスさん!エデルは…この闘いが終わったら必ずお返しします。それまで待っててくれますか?」
「俺からしてはまだ帰ってこなくてもいいけどな」
「なんだと⁈」
「そんなに喧嘩しないで。それでも、お返しします。ゼルネアスさんの、大切な人なんで」
エルピオンはにっこり笑ってゼルネアスに言う。ゼルネアスは軽く微笑み背を向ける。
「エル、これだけは言っておく。この世界に、まだ生きてる俺らの一族がいる。そいつを探せ…。きっと役に立つ。それとエデル。彼女を、死なせるんじゃねーぞ」
「もちろんですよ」
エデルも笑いかけ、アデルの一族は異空間に姿を消す。彼らとは会うことはもうないかもしれないが、彼らとの出会いはこの先心強いものとなるだろうと感じる。
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次回も楽しみに




