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剣術と愛情

 次の道を歩むエルピオンとヒュリー、ビリーは次の道を歩む。アデルの息子であるラフルとラファエルの道を歩むことになる。アデルが亡くなった後、母親と別れ二人で暮らしている。


「仲がいいんだね…」


「僕たちみたいだね」


「…」


 そっぽを向いているヒュリーにビリーは泣きそうな顔をする。その様子をエルピオンは真顔で見つめ続ける。


「違うの?!」


「当たり前だ。仲良くは無いだろう?」


「こんなに一緒にいるのに?!」


「そうだな」


「一緒にお風呂入ってんじゃん!」


「それは幼少期の頃の話だろ?!」


「いつも鼻歌歌ってるの誰?!」


「なんで知ってんだよ!」


「いつも聞いてるもん!」


「もんじゃない!」


「仲良し通り越してるような気がします…」


 言い合いをする二人に付け足すエルピオンにヒュリーは顔を赤くする。


「別に夫婦になれない訳じゃないのに…」


「別のジャンルになりそうだからこの話はこの辺にしよう」


「別のジャンルって言っちゃうんだ…」


「何の話ですか?」


「お前は気にするな。そうだ、ラフルたちの話をしないとな」


 かなり脱線したヒュリーは咳払いをしてラフルとラファエルの世界を見せる。二人は意外と仲良く暮らしている。夜になると二人で木刀を持って剣術を独学で学び続ける。


「あれ?瞳が…」


 エルピオンはラフルとラファエルの右目に金色に輝く『α』に疑問が浮かぶ。


「あれ?見たこと無かったけ?」


「無いと思うけど…」


「あれはアデルの一族の証と言えるものだよ。と言っても、元々ビリーが持っていた能力が息子達に拡散されたようなものだよ」


 エルピオンはその姿を見つめ続ける。汗水を垂らしながら剣術を学ぶ二人の姿。そして、青葉が黒ずんでいく季節、ラファエルに子供ができる。優しいもちもちとした姿に愛らしさを感じる。


「可愛らしい子供ですね…」


「そうだね。だけど、この後が…」


 少し時代が飛び、枯葉が散った季節にラフルが人間によって捕まってしまう。彼の体にいくつもの異様な色のした薬を注射器で注がれて行く。


「あれは?」


「中身は知らないが、人の頭をおかしくする薬なんだと思うよ」


 ふらつきながらラファエルの元へ戻ったラフルは持っていたナイフで彼を滅多刺しにする。一面が血溜まりになった時にラフルは絶望の声を上げる。その瞬間、自らの首にナイフを当てると一気に動脈を斬る。彼の首から血飛沫が飛び、そのまま倒れてしまう。


「それで…二人は死んだんだね。だけど、ラフルって言う人…懐かしく感じるのはなんでだろう?」


「お前の中で俺の力が流れてるんだろうな」


 後ろを見るとラフルとラファエルがやってくる。ラファエルはヒュリーとビリーに手を振ってくる。


「兄貴の力、伝染しなかったもんね。それにエルちゃんの剣術をやる時の動きが少しだけ兄貴の動きに似てるんだよ〜知ってる?」


「知りません…」


「当たり前だろうな。会うのは今日が初めてなんだから」


「そうだったね。でも、()()()とは…会ったことあるはずだよ」


「あの子って…?」


「覚えてない?本当に?」


「幼少期の…トラウマを思い出しそうで……」


 全員は申し訳なさそうに目を逸らしてくる。


「あの…ごめんなさい……」


「いや、そんなことないです!」


「でも…」


「次行くぞ…」


 移動するエルピオンたちはたくさんの工場が立ち込める空気が苦しそうな場所にやってくる。


「すごい煙…呼吸苦しくないのかな…?」


「苦しいと思うぜ。だけど奴ら人間には関係ないと思うぞ」


「この世界はどんな世界なんですか?」


「人間として認定されている人は幸福で、それ以外の人は家畜以下の世界だよ」


 ビリーはドーム状になっている場所を指さす。そちらに向かうと中にはたくさんのブロック状になったコンクリートを台車もなしで運んでいる足枷と首輪を付けた人たち。その中に一際目立つ桃色の髪色をした少年が目に入る。来ている服もボロボロ。しかし大きなコンクリートを折れてしまいそうな細い腕で運んでいる。


「あの子…!」


「この世界にいるアデル一族、ハルだ」


「ハル…」


「アデルの一族と言うだけで、あの場所に閉じ込められた少年だよ」


 仕事が終わり、部屋に連れていかれる彼らだが出されるのはほとんど水のスープだけ。しかし別室に居る女性の人は新鮮な果実を口にしている。沢山食べているせいでが、身体はうる艶になっている。


「あの子だけ、ずるい様な…」


「ついて行ってみる?」


 彼女は首輪にリードを付けられどこかに連れさらわれる。にこにこしている彼女が連れ込まれたのは血が四方八方に飛び散っている金属音が酷い場所。ツヤツヤした女性たちは裸にされ、大量に血が付いた切断機で悲鳴をあげながら切り落とされて行く。


「なに…これ!」


「彼女たちは肉になるんだよ。家畜のようにね」


 肉にされた彼女たちが行く場所は王族や貴族の家。肉を受け取った料理長は腕を振るい、王族達に食べさせて行く。肉はレアに焼かれ、美女のレアステーキの出来上がり。

 それを見る度エルピオンは吐きそうになってしまう。これが現実に行われていたと考えるとこの時代に産まれなかった自分を幸福と思ってしまう。


「果実を口にし始める女を見かけたら肉になると感じているんだよ。だから誰も何も言わないんだ」


「次に行くよ。エルちゃん…?大丈夫そう?」


「何とか……です」


 ハルを見ていると彼はとある少年ハルタと出会う。彼は生れつき心臓に持病があるそうで、心臓に負担がかけられない。そう思った人間たちはハルを連れ出し、麻酔無しで腹を引き裂かれ、心臓を抜き取られる。目を覚ましたハルタは大量出血ショックで死んでいるハルを見て本来の力を発動させる。ハルの心臓のせいで、アデルの力を発動させるハルタだが、瞳にある『α』の文字が赤く光っているのがわかる。


「ハルさんの力って…」


「破壊だよ。全てのものを殺す破壊さ」

ここまで読んでくださりありがとうございます!!!

次回もお楽しみに

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