パレード当日
よろしくお願いします
眠っているエルピオンは、カーテンの隙間から指してくる陽の光によって目を覚ます。
体を起こし、ベッドから降りると懐中時計を手に取り時間を確認する。時計の針は七時を指している。
「もうこんな時間か」
エルピオンは一度背伸びをしてカーテンを開ける。その光によってハルルカも目を覚ます。
「エル、もう起きたの?早いね」
ハルルカは目を擦りながら、体を起こす。
「おはよう。まだ眠そうだね」
「まあ〜ね。寝起きだし…」
ハルルカはハイハイをしてベッドを歩くが、寝ぼけているのか、そのまま床に落ちる。
「大丈夫かい?」
「痛い…」
◆❖◇◇❖◆
二人はいつもの服装に着替え、食堂に向かう。着くと食事の準備がされていて、いつでも食べれる状態にある。
「あら、おはよう。さっきすごい音したけど大丈夫?」
ハルルカはビクッと体が跳ねる。
「大丈夫です。私がベッドから落ちただけですから」
すかさず、エルピオンが言う。ハルルカは「どうして?」と言う眼差しでエルピオンを見る。
「そうなの?大丈夫だった?怪我してない?」
「大丈夫です。お気遣い感謝します」
席に着き、エルピオン達は食事を始める。
「エル、なんで自分だと言ったの?」
「その方がわかりやすいでしょ?それに、優秀な魔導師のルカが落ちたなんて言えないよ」
ハルルカは少し赤面をする。
エルピオン達は食事を終え、受付にいるマスターに挨拶に行く。食堂に向かう途中の人達とすれ違う。
「なあ、受付のところにいたメイド、誰だろうな?」
「めっちゃ美人だったよな。美しすぎるぜ」
エルピオンはその話に耳を傾ける。だが、すれ違いざまに聞こえただけなので、聞くに聞けない。
「エル、どうしたの?」
「いや、なんでも」
受付に向かうと、確かにメイド服を着た女性が立っている。どこかで見た事のあるようだが、訊くに聞けない。
「マスター、今日はありがとう」
「いいんだよ。それよりあの子、誰だか知らない?」
「あの子?」
ハルルカはメイドを見る。メイドは視線に気づき、振り返る。顔を見た瞬間、エルピオンは「あっ」と声が漏れる。
「マリア…」
「え?エル知り合い?」
「どうしたのさ、こんな所に」
「エルピオン様、旦那様のご命令により、お迎えに上がりました」
「お迎えって…」
エルピオンは顔を引きつる。
「なんでも、滅茶苦茶な場所なので、分かりずらいと思いお迎えに上がりました。さぁ、参りましょう」
「ちょっと待って」
エルピオンは待ってもらうように言い、マスターに向く。
「マスターさん、お世話になりました。また来る時は、よろしくお願いします」
「はいはい、また来てね。それより早く行きな。旦那様?が待ってるでしょ?」
「はい!行ってきます」
エルピオンはハルルカを連れて、マリアの後を追う。
◆❖◇◇❖◆
外に出ると、パレードを見ようと人集りができている。それを割って目的の場所に急ぐ。
「マリア、待って…早いよ」
「急がなければ、間に合いません。急いでください」
すると、渡ろうとしたところに、兵士に止められる。
「こっから先はダメだよ。もう少し下がって」
マリアは懐からある手帳を見せる。
「旦那様からのご命令です。通らせて下さい」
その手帳を見た兵士は、慌てて敬礼をする。
「も、申し訳ございません。わかりました、どうぞ通ってください」
「申し訳ない」
兵士は、反対側にいる兵士に通すように命じる。その直後に、国王を連れた騎士団が到着する。
「まずい!早く通れ!」
「行きますよエルピオン様!」
「了解!」
エルピオン達は走って横切る。エルピオンは走り際に、白馬に乗った騎士と目が合う。そして、そそくさと通り過ぎる。
◆❖◇◇❖◆
到着すると、白いテントの下にグルテスとメイドたちが居る。
「旦那様、申し訳ございません。遅くなりました」
「大丈夫だよ。時間ピッタリだ。エルピオン君、準備運動はいいかな?」
「さっき走ったからね。でも動くにはもう少し動いておきたいかな?」
「エル、どういうこと?」
「そっか、ルカにはまだ話してなかったね」
エルピオンは大会のことと組織の代表者のことを話す。
「そ、そうなのね」
少し動揺しており、それだけの言葉しか出ない。
「ごめん、ちゃんと話しておけば良かったね」
「大丈夫よ。少し動揺しただけだから」
「エルくん、準備運動用としてある者を呼んでいるのさ」
グルテスの後ろからひょこっと姿を見せたのが、エルピオンより、少し身長が高いイケメンと言える好青年が出てくる。
「紹介しよう。彼はダンゲル。意味が現れなかったら彼がここの騎士王と戦うことになっていた組織のお偉い人だ」
「よろしく、君がエルピオンだね。グルテスから聞いてるよ」
「よろしく」
「さて、まずは準備運動をしよう。ダン、エル。準備はいいかい?」
「はい、大丈夫だよ」
「いつでも」
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