千本桜
ラルカについて門の前までやってくると、時空が引き裂かれたような痕ができている。
「おばあちゃん…これって」
「そう、おばあちゃんにも時が来たのよ」
ラルカはその時空に足を伸ばす。吸い込まれるように消えていく。エニシャは身を震わせながらエルピオンに背中を押されてゆっくりと入って行く。
抜けた先にはたくさんの桜の木の下に出る。
「ここって…!」
「今が見頃の千本桜の広場よ」
「どうしてここに?!前まではこことは別の場所だったのに?!」
「昔と…かなり変わってしまったわね」
「どういうこと?」
「エル!!」
遠くからシュンサクの声が聞こえてくる。それと一緒に警官だと思われる人たちを連れてやってくる。
「あれ師匠!!なんでここにいるの?」
「中に人が居るって行って入れてもらったんだ。それと色々と探ってみたらこの場所がどういう場所なのか何となくわかってきた。時期に全員ここに集まる」
シュンサクがそういうとあちらこちらから全員がやってくる。
「ルピ〜!おまたせ!」
「みんな…良かった」
仲間の姿を見たエルピオンは少しだけ安心する。
「それで…わかったことって?」
シュンサクはラルカから聞いた昔に起きた戦争について話す。そしてこの場所が青年を守る軍隊の本拠地なのである。そして、ラルカが連れ込まれた場所なのである。
「そうなんだ…」
「それよりその女性…。なんだか元女王、ラルカ様に似ているな」
「そのラルカ本人だと言ったらどう思うかしら?」
「はァ?!ガチなのか?!」
「ふふふっ、そうよ」
嬉しそうにしているラルカだが、エデルは嫌そうな顔している。
「無駄話はここまでにしましょ?さて…」
ラルカはひとつの桜の木を見つめる。その桜の木が風邪で揺れると白く細い腕が垂れてくる。その手にエルピオンはギョッとする。
「そこで…ずっっっっと待っていてくれたのね。騎士長」
腕が戻ると美しい銀髪の髪を後ろで縛った鎧を着た女性が姿を見せる。
「ラルカ様、よくぞご無事で…!」
「ここで私を待っていてくれたのね」
「はい…貴女様を守るために、ジーム様が閉じ込めたとお聞きしたので」
「そうなると…ジームくんの力が切れたのね」
「ジーム様は、私と一緒にここで待っていてくれました。しかし時が来てしまい、先に行かれました。ラルカ様、私達も」
「そうね…。エルちゃん、ついでに言っておくわ、彼女が貴女たちが追っていた千本桜の謎の正体よ」
「えっ?!」
ラルカは笑って言う。そして彼女は騎士長の手を掴む。しかし異常な気配が感じ取れ、エルピオンたちは身構える。
「この気配は一体…?!」
「やっぱり居たのね…地獄にも行けず、天国にも行けない…神に見放された哀れな魂たち」
青白い炎と共に血だらけになった人のような生き物たち。
「こいつらは…!お下がりください、陛下!」
騎士長は剣を抜き、奴らに向ける。生気を持たない彼らにエルピオンは全身がゾワゾワしてくる。
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