ルービック国
エデルは言葉を詰まらせながら話し始める。
「きっとそうでしょう。あのお方が、そのようなことをお遺しになるとは…思ってもおりませんでした」
「エデルも…大変だったんだね」
「そんなことありません。しかし…」
エデルは何かを言おうとしたが、途中で言葉を詰まらせて話すのを止める。
「そうだ!お前らに報酬やらないと。おじさん達に怒られちゃうよ」
「おじさんたち?」
「エルは覚えてない?グルテスさんのこと」
「あぁ…グルテスさんね…おじさんって呼んでるんだ…」
「そう!あの組織のボスはみんな俺の親父の部下なんだよ。それに俺、あの人たちに結構お世話になってるからさ。はいこれ報酬ね。大切に使いなよ?」
ダンゲルはエルピオンにお金が入った袋を渡す。中を見ると金貨が多く入っている。
「ざっと15億フェンニーだよ」
『15億フェンニー?!』
「そんなに貰っていいのかよ!」
「それだったらパン何個買えるの?」
「パンじゃなくってお屋敷が買えるよネーニャ」
「ふぇぇぇぇぇえ!すごいね!」
「エルはそのぐらいの成果を果たしてくれたんだ。もし何か欲しいものがあるなら俺が払ってやるよ」
「そんなことしなくていいよ!こんなけあれば楽だからさ」
「いや、そのぐらいさせてよ。本当は俺に依頼された物をエルがやってくれたんだからさ」
「ではどこか休息できる場所はありますか?エルピオン様は酷く疲れていらっしゃるので」
エデルはエルピオンのことを心配して声を出す。
「休息できる場所か…ならルービック国へ行くといいよ。ちょうど今、桜が満開だからさ」
「桜…いいね!行こう!」
「それと、幌馬車を貰えませんか?馬は要らないので」
「ん?そんなの何に使うんだ?馬無しで…まさかお前が運んでいくとか言うなよ?」
「そのまさかですよ…?」
エデルは薄気味悪い笑顔を向ける。
◆❖◇◇❖◆
その後、すぐにダンゲルはエルピオン達に幌馬車を持ってくる。もちろん馬無しで。
「こんなにいい物を貰っていいんですか?」
「あぁ、これならそっとやちょっとじゃあ壊れたりしないさ。本当に馬無しでいいのかい?エデルさんよ」
エデルはダンゲルの言葉を聞かずに幌馬車を見続ける。
「おい…人の話聞けよ…」
「何してんですか?」
「ちょっと点検中…」
エデルは幌馬車の馬を繋げている手網などを見る。
「これは…いりませんね」
エデルは幌馬車に着いている手網を外し、地面に投げ捨てる。馬と幌馬車を繋げている部分だけ残し馬がつける部分を体に巻き付ける。
「まじでそれで行くのかよ…」
エデルは深呼吸すると自らの体を馬に変身する。突然の事で驚くエルピオンたちは唖然とする。
「まじで!!馬になれるのかよ!」
『ええ、そうですよ』
「これって…」
「テレパシーです。皆さんに聞こえるようにしてあります…魔導師である私でも上手くできないものを…」
『ほら、早く乗ってください。出発しますよ』
「あ、待ってよ!」
エルピオンたちは幌馬車に乗り込み、ダンゲル達に別れを告げる。
「ダ〜ン!また会おうねー!」
エルピオンは力一杯ダンゲルに向かって手を振る。ダンゲルも同じように手を振る。見えなくなるまで振り続け、別れを惜しむ。
「またね…エル。エデルさん…いや、エデル」
ダンゲルは不気味に笑顔を向ける。片目には《α》の文字が浮かび上がっている。
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