暗闇
ダンゲルはハルルカ達に話す。
「あの神社は昔に集落が存在していたんだ。その集落では子供を神の生贄に捧げる行事があったそうだ。そんなある日、赤子を産み落とした母親が生まれて間もない子供を捨てて行ったんだ」
「なんで!産まれたばかりの子供を捨てるなんて…!」
「その子供には片目が作られていなかったんだ。目玉は溶けてしまったんだ。その空洞の片目を見て母親は恐怖し、神社に捨てて行ったらしいんだ」
「よくそんなのできるな…」
「人間はみんな酷いことするよ。俺たちだって…簡単に生き物を殺すからね」
「……」
ダンゲルのその言葉にハルルカたちは恐怖を覚える。
「だけど…それを見た神社の神様は哀れんでその子供を育てようとしたんだ。しかしその子供は呪われてしまっていた。その子供は神様を捕食してしまったんだ。怒りが積もったその者は化け物となってしまった…という話」
「それがエルとどういう関係になるんだよ…」
「神様はその化け物となってしまった少年を解放してやりたいんだよ。だから強い女を連れて、神社に向かうんだ。もしかしたら強い女を求めていたんじゃないのかって…俺には何も無かったからさ」
「そうだったのかよ…じゃあシュンさんはなんでだよ…」
「さあ?ただ単にエルちゃんを追いかけに行ったんじゃないかな?俺は分からないけどね?」
ハルルカ達が話をしているがヘルガはずっと空を見上げている。
「ヘルガ、お前どうしたんだよ」
「…風が変わった…。何かが来ます…」
「まじ?!」
全員が空を見上げると純白のドラゴンが目に入る。そのドラゴンはハルルカたちの前で降り立つ。そのドラゴンが何かを咥えて居るのを目に入ったハルルカはじっと見つめる。
煉獄のように赤い髪の者を見てハルルカはエルピオンだとわかる。
「エル!」
「えっ?!」
全員が見ていることに気づいたドラゴンは静かにエルピオンを下ろす。負傷したエルピオンを見て、ハルルカはすぐに回復魔法をかける。
「エル…しっかり!」
ハルルカは呼びかけるように魔法をかけ続ける。
◆❖◇◇❖◆
目を開けたエルピオンは暗闇の中にいる。
「ーここは…どこだ?ー」
起き上がるエルピオンは周りを見る。何も無い。無音が立ち込めているだけ。
「ー一体ここは…?ー」
すると遠くで赤子の泣く声が聞こえてくる。エルピオンは反射的に声のする方へ歩き始める。
赤子を見つけたエルピオンはなんだか悲しくなる。その子供はガリガリに痩せ細っており、骨と皮だけに見える。布で巻かれているがなんだが雑に見える。
エルピオンはその赤子を抱き寄せる。母性が芽生えたのか母親のような気持ちになる。
「君は…ネーゲロンだね」
エルピオンがそう言うとその赤子は泣き止む。じっとエルピオンを見つめてくる。
すると赤子はエルピオンの腕から離れ、ハイハイを始める。すると体が大きくなり、4歳ぐらいの子供になる。
「どうしてわかったの?我が…ネーゲロンだと…」
「なんだかそんな感じがしたんだよ。ただそれだけ」
「そうか…」
エルピオンはそう答えると、ネーゲロンの後ろから和紙でできた灯篭が歩み寄ってくる。
「あれは…」
灯篭を持ったその人の姿を見て、エルピオンは驚く。それはエルピオンの叔父であった。
「エルちゃん…あの黒い刀を使えるようにしてくれてありがとう」
叔父はエルピオンを抱き寄せる。
「エルちゃん、君はちゃんと生きるんだよ?ネーゲロンは自分が連れていくから…さあ、帰りなさい」
叔父はエルピオンに帰るように言う。エルピオンの背後からは無数の手が伸びている。ネーゲロンたちを見ると二人は手を繋いで歩いて行く。
エルピオンはほっとして無数の手を見る。そこからはハルルカ、シュンサク、アーテルス、ヘルガ、ネール、ウルファス、ウルベルトの手が伸びている。エルピオンを助け出そうとするその手にエルピオンはその手を握る。エルピオンはその手たちに引っ張られ、現実世界に戻ることにする。
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