パレードの大会
よろしくお願いします
エルピオンは置いてあった紅茶を一口飲み込む。
「私に頼みたいことって何?」
「君、明日何があるか知ってるか?」
「パレードだろ?国王の」
「そう、それの後に中央広場でこの国の一番強い者ー騎士王
ヘルズーと、組織の代表として闘ってもらいたい」
ボスである彼がそういう。エルピオンは目元が鋭くなる。まさかここの国の一番強い人間と闘える事に。エルピオンは興奮で体が熱くなる。
「エルピオン君、興奮している所悪いんだけど、もう少し抑
えてくれないか?屋敷が燃えてしまう」
エルピオンが気づくと、剣がカタカタと音を鳴らして震えていた。彼女自身が興奮してくると剣はそれに応えようと揺れ動くようになっている。
「これは失礼しました。でも何故です?パレードの時にそん
なことをやるのです?」
「あの国王が、見せびらかしたいのだよ。自分の騎士王が強
いって。それにどこかの国にいるお貴族様に見てもらいたい
のでは無いのかもしれない」
「ふ〜ん」
エルピオンは興味なさげに紅茶を啜る。
「私以外にも、呼んであるの?」
「一応上の者に頼んである。な。だが、要らなさそうだな。
君がやってくれるなら」
期待を込めた眼差しでエルピオンを見つめる。
「もちろん、お引き受け致しましょう。ただし、条件があり
ます」
「なんだい?まさかお金かい?」
「いいえ、違います。お金なんていりません」
「じゃぁ、何かな?」
「魔王城まで行く道を教えて下さい。それだけです」
思わぬ発言にメイドたちが焦る。
「貴女!魔王城に行く気なんですか?!死にますよ!」
「死にませんよ。私は強いですから」
「だからって言っても!」
「これ、落ち着きなさい。なんで魔王城に行きたいのかね?」
「魔王に、私の故郷と家族を奪われたからです。私は魔王の
首に刃を振るう。それだけです」
「旦那様!こんな馬鹿げた子なんかより、あの男の方が…!」
「わかった、魔王城までの道を教えよう。それでいいかね」
「はい」
「旦那様?!」
「レーゼ、大丈夫だ、この子なら必ずやってくれる。あの男
は騎士王様にバレてる。たまには変えてみないと」
面白半分に彼は笑う。
「だからって言って…」
銀髪ショートのレーゼは消えるような小さな声になる。
「エルピオン様ってお強いのですか?私よく知らないですけど」
ツインテールのメイドはウキウキしながら訊く。
「あんた聞いてなかったの?あの女の話。このお方はあの化
け物級の火山龍仕留めたんだよ!」
「え!凄い。てことはさっき倒したばっかですよね」
「ああ、そうだよ」
「それにいて無傷って…この子もチート級ね」
二人のメイドはわちゃわちゃしているのにもかかわらず、アリスは静かにしている。
「そういえば、僕のこと話してなかったね。僕はこの国の街
の組織のボスをしているーグルテスーという者だ。よろしく
ね」
「よろしくお願いします」
「そして、この銀髪の子がレーゼ。ツインテールの子がマリ
ー。そして、君の後ろにいるのが…」
「マリアですよね」
「知っていたのか。と言うことでよろしく頼むよ。それと、
魔王城への行き方は、大会に勝ってからね」
「はい、よろしくお願いします」
「武運を祈るよ」
エルピオンは一礼して、その部屋を出る。紅茶はもう飲みきっていた。
「さて、忙しくなるよ。明日の準備をしよう」
◆❖◇◇❖◆
エルピオンは彼らと別れて、道を急いでいた。もう日は落ちて、月夜になっている。途中途中、ガラの悪い男達に言い寄られていたが、拳で静まれた。
「すっかり遅くなってしまったから、ルカ怒ってるよな」
そんなことを考えながら、帰り道を急ぐ。
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