神社
エルピオンは慌ててホテルを出て行く。その手はエルピオンにしか見えていないようだ。
「ーあの手はどこに連れていく気なんだよ!ー」
エルピオンは苛立ちを覚えながら追いかけて行く。すると人気の無い場所に出るとその白い手は人の形を保つ。エルピオンは走って追いかける。白い物は人がいない場所まで来ると初めに着いた花街とは異なる誰も居ない集落にやってくる。
「ここは…」
周りにある家は全て崩壊し、もう集落では無いと認識できるほどになっている。
そして白い物は鳥居がある階段を登っていく。階段はとても高く急な坂。一歩足を踏み外せば落ちてしまう。
エルピオンは覚悟を決めて階段を登っていく。
◆❖◇◇❖◆
エルピオンが居なくなってからシュンサクは目を覚ます。
「行ったのか…」
こっそり声を出し、シュンサクはホテルの窓を開ける。ベランダに出てフェンスに足をかけるとそのまま飛び降りる。赤い炎を身にまとい、エルピオンを追いかける。
◆❖◇◇❖◆
階段を登り終えると目の前に神社がある。そこには看板があり、文字を読む。
「えっと?この神社には深夜の二時以降、来ては行けません…花道の二番を歌っては行けません。お参りしたら直ぐに帰りましょう。呪われてしまうから…」
その後の文字は掠れてよく見えない。しかしエルピオンたちが探していた神社はここで間違いないようだ。
エルピオンは懐中時計を取り出す。時計の針はもう時期二を指す。
「やってみるか…」
エルピオンは覚悟を決めてコインを取り出す。神社に向かって歩き出し、賽銭箱にコインを落とす。二拍手一礼をしてエルピオンは振り向く。その帰りに花道の二番を歌う。そうすると周りの空気が変わる。エルピオンは鳥居の前で止まり、振り向く。そこには生き物とは言えないたくさんのものを飲み込んだスライムのようなものが蠢いている。
「こいつが…ここの都市伝説の本体…!」
見たことの無い生き物を相手にエルピオンは興奮で剣が蠢いている。
「あら?一人だけ?」
上から声がし、エルピオンは上を見上げる。鳥居の上に黒い翼を持った肌が黒い女がエルピオンを見下ろしている。
「お前は…?!」
「私はクロージュ、魔界兵団の一人よ。貴女がエルピオンね」
「そうだよ!マヌスの命令か?!」
「そう、あのお方のご命令よ。だけど…仲間はもっと居たはず…呼ばれたのは貴女だけだったのね?」
「どういうこと?呼ばれた?」
「この神社の神様よ…分からない?」
エルピオンはふと白い物のことを思い出す。自分があの白いものを追いかけてここまで来た。それがここの神様だと言うのだろうか。
「でもダメ。あなたはここで死ぬのよ…その怪物に食べられて…」
エルピオンは背後を見る。怪物の中には先程まで生きていただろうと思われる人々や魔物が蠢いている。煌びやかな着物を着た女性も居る。彼女は遊女だと思われる。エルピオンはその姿に怒りが湧く。クロージュはきっとたくさんの人々をここまで誘導して食べさせたのだろう。
なんとも言えない怒りがエルピオンを支配する。
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