花魁
初めて見る国の景色にエルピオンはあちこち歩き回る。
「ところで…なぜこの国はこんなに華やかなんですか?夜なのに明るい…」
「ここは遊郭と呼ばれる夜の街だ。この国は陽が昇っても、すごく低いんだ。ほとんど陽が入らない…だから夜の街だけでも明るくしようとこうなった訳だ。まぁ、東の海にある国に向かった使えている人たちがそれを真似してできているとも言われているな」
「シュンさん、なんだか詳しいですね」
「その東の海に行ったことでもあるのか?」
「気のせいだ。噂話を聞いただけだ」
シュンサクは早足で歩き出す。エルピオンたちは置いていかれないように後に続く。
「ところで…ヘルガさんは?」
「…はぁ?あの野郎!」
アーテルスは早足でヘルガを探す。
ヘルガは一人で夜の街を散策している。すると二階のベランダから声をかけられる。
「そこのお兄さん〜寄っといでよ」
「一緒に遊びましょ〜♡」
「お菓子もあるよ〜」
三人の遊女から声をかけられ、ヘルガは彼女たちを見つめる。わなわなと震え上がるヘルガは鼻下を伸ばした笑顔で遊女たちがいる店に入ろうとする。
しかし、ヘルガの首根っこを取り押さえられる。後ろを振り向くと鬼の形相のアーテルスが居る。
「お前…な〜」
「あ、ああ…ああああああああぁぁぁーーーーー!!!!!!」
絶叫するヘルガに、アーテルスは腹パンをして連れ去る。
「お姉さんたち〜ごめんね。また今度来るね〜」
清々しい笑顔をするアーテルスに遊女たちや街の人たちもドン引きする。
「あの人…やばいね」
「うん…」
「惚れてしまう…♡」
『えっ?!』
一人の遊女は頬を赤くしてうっとりしている。彼女のその様子に二人は動揺する。
◆❖◇◇❖◆
戻ってきたアーテルスは瀕死状態のヘルガを抱えている。その様子にエルピオンたちは苦笑いをしてしまう。
「お、おかえり…」
「悪いな〜こいつ遊郭に入ろうとしてたから連れ帰って来たよ」
いい笑顔で言うアーテルスにエルピオンたちは唖然とする。すると太鼓の音が街に鳴り響く。
「今の音何?!なんかの攻撃?!」
「今のは太鼓だ…攻撃じゃない」
エルピオンたちは人混みをかき分けて先頭に出る。そこには煌びやかな衣服を纏った三枚歯の高下駄を履いた女性が多くの人を連れて歩いている。高下駄を履いたその姿は女性でもうっとりしてしまう。
「花魁道中だな」
「花魁道中?」
「ああ、馴染み客を花魁がお迎えに行くんだよ。運がいいな…あれを見られるのは限られた時間だけだからな」
「そうなんだ…」
ゆっくり歩いている花魁を見て母親を思い出す。母も、あのような着物を着たらあのようになるのでなるのではないのかと。
母も、あのように美しかったから。
「エルちゃん〜?行くよー?」
呼ばれたエルピオンは早足で人混みをかき分けて追いかける。
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