恨みと悲しみ
獣たちはシュンサクの放った雷電で体を麻痺させる。しかし、次から次へと奴らはやって来る。
「キリがないな…」
「エルの加勢に向かいたいがこの数じゃ行くことも出来ねぇ」
シュンサクはエルピオンを見つめる。エルピオンは何とか彼女を引き離す。彼女は人とは思えない力を持っている。
「どういう力なんだよ…!本当に女性の人なのかよ…」
「ウウウヴァァァァァァァ!!」
彼女は音にならない声を上げる。その音に頭を痛める。その声とともに何かが脳に流れてくる。仲良さそうに話をする男性の姿。その姿がどこかで見覚えのあるその顔。男性は運転をしている。すると突然前からトラックが突っ込んでくる。エルピオンは思わず目を閉じる。
「今のは…?」
「グルァァァァ!!」
彼女はヨダレを垂れ流しながらエルピオンに駆け寄る。
「炎虎!!」
エルピオンは咄嗟に炎の虎を生み出し斬撃を入れる。彼女の腕を切り落とし地面に転がる。しかし、彼女は苦しむ様子を見せない。痛覚がないように感じる。
「こいつ、どうやって倒せば…!」
「キャー!」
アーテレの声がしてエルピオンはそちらに目線を取られる。アーテレの元に小人の魔人が迫り寄っている。小人の魔人は持っている武器でアーテレを殴ろうとする。
「やめろ!」
エルピオンは駆け寄るが間に合わない。すると突然後ろからエルピオンより早い速度で何かが通り抜ける。そして小人の魔人を鋭い爪で引き裂く。
それは地獄の少女になってしまった彼女である。その様子にエルピオンは唖然とする。敵だと思っていた彼女はアーテレを護ろうと走り出したのである。
「なんで…?」
威嚇をする彼女に小人の魔人は恐ろしくなりアーテレから離れる。すると彼女は神父を殺そうと襲いかかる。エルピオンは慌てて引き離す。
その様子を見ていたシュンサクたちは驚いた様子を見せる。
「あの魔獣を取り憑かれた人は自我を持たない。それなのになぜ…?」
「なにかアーテレにあるのか?」
引き離された彼女は怒りのあまり声を荒らげる。その声にエルピオンは頭を痛くなる。また脳に何かが流れ込んでくる。
それは事故があった後のもの。血だらけになったその腕が見える。かすかに動いているのがわかる。トラックからでてきた人の顔を見てエルピオンは慌てる。
それは今ここにいる神父の姿。彼は慌ててトラックに乗り込み、そのまま逃走をする。エルピオンは確信をする。これは彼女の記憶。
彼女は自分に教えてくれた。自分が殺された…殺した男の記憶を。
エルピオンは振り返り神父を見つめる。神父は驚き、後退りをする。
「な、なんだ!自分を護ってくれているのでは無いのか?!」
「エルさん!」
「アーテレさん…私のことは恨んでください!」
エルピオンは剣を神父に振り落とし、彼を殺す。目の前で自分の父親が殺されることにアーテレは絶望をする。彼は大量出血で死亡をする。
エルピオンは剣を捨て、彼女に寄る。
「もう、終わったよ。貴女が…いや、君が恨んでいる男は死んだ。もう、終わろうよ…僕も一緒に行くからさ…」
エルピオンは彼女は抱き寄せる。エルピオンと思えない言葉で優しく…優しく。
「カイ…リ」
彼女の口から漏れた言葉にシュンサクは驚く。それはここに戻ってくる前に偽マヌスにさせられていた天空人。
エルピオンに抱きしめられていた彼女は力を無くし、崩れる。彼女は骨となる。その骨は徐々に腐って行き、砂となる。気がついたエルピオンは灰となってしまった彼女を見つめる。
「行けたんだね…カイリさんと一緒に…」
暗かった教会に朝日が差し込む。エルピオンを日光が灯すとエルピオンの傍を二つの光の玉が浮遊し、空に登っていく。そしていつしか魔獣たちが姿を消している。それが全て幻覚だったかのように。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
エルピオンたちと前に出会った偽マヌスにされてしまった天空人。そんな彼はエルピオンの体に憑依し、彼女と共にあの世に行ってしまった。助かったのか分からないが、彼に助けられたと、思っても良い
もしも、この物語が少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思ってくださるなら、感想お待ちしてます!
では、次回もお楽しみに




