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依頼

よろしくお願いします

 裏から出てきた受付の人は何も持たず出てくる。


「あの、お名前は?」


「エル。エルピオン・ガーネルス……何かある?」


「我々のボスが貴女とお会いしたいそうです。どうぞ、中へ」


「この火山龍の頭はどうすればいい?」


「そちらはこちらでお預かりします。早く中へ」


 受付の女性は真剣な表情で中へ誘導する。さっきまでのオドオドしていたのが嘘のようにちゃんとしている。

 エルピオンは彼女の誘導に従い、いつも裏口に消えていく扉に行く。


「これより先は、係の者に頼んでいます。こちらでお待ち下さい」


 受付の彼女は先程入った入口から出て行く。一人残ったエルピオンは真っ暗闇の中、瞳を閉じる。このままじゃ、係の者が来ても、目だけでは分からない。エルピオンは静かに息を吐く。ここの空間を自分のものにする為に。


「ー誰かが来る。灯りを持っているー」


 エルピオンは音に集中する。ヒールで歩くようなコツコツ音とランプのようにキィー、キィーという、音が近づいてくる。エルピオンはそちらを見ると、人魂のような薄らと光るランプを持った女性が近づく。


「エルピオン様、ですね」


「そうだよ」


「ボスの元まで御案内します。付いて来てください」


「了解」


 スタスタ歩いていく彼女の後をエルピオンは追いかける。ハイヒールの癖に、意外と足が早い。彼女は無言で先を歩く。歩いていると、少しだけ明るくなって来る。


「エルピオン様はどうして、そんなに強くなったのです

か?」


「うぇ?」


 突然の問にすぐに答えられなかった。


「えっとね〜?私の師匠がすごい強い人でね。まだ一度も勝

ったことは無いんだよね」


「貴女のお師匠様はどういう人なんでしょうかね?」


「さぁね。でもたまに聞くけど、もしかしたら人間じゃない

かもね」


「お顔は拝見していないのですか?」


「いつも狐のお面を付けてるからね。見た事ないんだ。外そ

うと思っても、いつも投げ飛ばされちゃう」


 笑いながら言うと、彼女はクスッと笑う。まるでお人形さんのような心が無いように見えたエルピオンからしてみれば、人間らしさがあると思えた。

 そして、一回咳ばらいをして、いつもの調子を取りもどそうとする。


「それでは、エレベーターに乗って上に参ります。どうぞ、

こちらへ」


 彼女はガラスの板の上に乗り、こちらに誘導する。エルピオンはゆっくりとつま先で確認する。


「ご安心ください、そう簡単に割れたりしません」


「そ、そうなのか?」


 エルピオンは両足を乗せる。


「行きますよ」


 彼女がそう言うと、ガラスに魔法陣が展開する。二人はその場から消えるように移動する。

 着いた場所は先程より明るい場所。床は赤いカーペットが敷かれており、壁にはランプが飾られている。まるでお屋敷に来た気分になる。


「こちらです、どうぞエルピオン様」


 彼女はスタスタと歩いて行く。


「申し遅れました。わたくし、こちらでメイドをしておりま

す、マリアと申します」


「それより聞きたいのは、なんであんたは私の名前を知って

るのさ」


「それは、名簿表に名前と顔写真があるので」


「私、名簿表に名前なんて書いてないよ」


「貴女様は何度もこの組織をご利用しておりますでしょ。そ

こで勝手に名前と顔写真が名簿に入るようになります」


「そうなのか?知らなかったな」


 エルピオンはピクっと眉毛が動く。


 彼女の後を追いかけるに連れて、ある部屋に向かってる事がわかる。この屋敷の一番奥の部屋に。その部屋の中から大男が出てくる。


「冗談じゃねぇ!俺にはそんなの無理だ!帰らせてもらう!」


 何やら慌てている様子。顔は少し青ざめている。

 マリアはその大男に一礼をする。彼は「ひっ!」と恐怖じみた声を上げ、屋敷の出口を探す。部屋の中からゴソゴソと声がする。


「=やっぱりダメでしたね、ボス。どうしましょ?=」


「=次を待つんだ。必ずやってくれる人が出てくるから=」


「=無理ですよ。きっと、次の人も…=」


 弱々しく女性の声がする。


「=次は確か、エルピオンという子だね。どんな子かな?=」


「=ボス?!いくらなんでも女性は無理でしょ?=」


「=分からないよ。聞いてみなくっちゃ=」


 優しそうな男の声。今の声の主が、ここのボスなのだろう

か?

 マリアは扉をノックする。中から「入りなさい」と強い声がする。マリアは扉を開ける。


「失礼致します。エルピオン様を、お連れしました。エルピ

オン様、どうぞ、お入りください」


「失礼しまーす」


 エルピオンはひょっこりと顔を出す。


「待っていたよ。さあ、そちらのソファーに座りなさい」


エルピオンは中に入り、真っ白なソファーに座る。そこには

まだ先程の大男の温もりが残っている。飲みかけの紅茶も残

されたまま。ツインテールの金髪のメイドがすぐに下げ、新

しい紅茶を入れる。


「君に、折り入って頼みたいことがあるんだ」


 緊迫とした空気に、エルピオンは生唾を飲み込む。

ここまで読んでくださりありがとうございます

良かったら次回も読んでください。

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