きみとはなしができたなら『未練』
未練
懸命に、断ち切ったつもりだった。
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あなたはわたしを罵りながら、スマホの画面をタップして、そしてそのまま、予約したばかりの結婚式場を、あっさりと解約した。
ただ、あなたが先に「好きな人ができた」って言ったから。
怒りに任せて、同じことをやり返しただけ。
目には目を。それしか頭に思い浮かばなかった。
仕返しにやってはみたけれど、ぽつんと残ったものは、「これでおあいこ」という言葉だけ。
なんて、虚しい言葉だろう。
仕返しをして、やってやったと、どこか勝ち誇ったような気持ちになったのに。
身震いするほどの、満足を得られたというのに。
それなのに、いつまでも、なにもかもを許すことができない、わたしの弱さへと跳ね返る。
けれど。
やっぱり、わたしを傷つけた、あなたのことが許せない。
たとえ、わたしに似たひとと、結婚したのだという噂を、耳にしたとしても。
これは呪いであって決して未練なんかじゃない。
あなたが、あの時。
先に、別れてくれと言ったのだ。
想いとは、魚のように回遊し、永遠に帰着せず。
堂々巡りなのだなあ。
笑え。
わたしの中の、わたしへ