第一章その7(東京都渋谷区南平台町)
三人の間の時間が止まり、換気扇と洗濯機の回る音だけが淡々と時の流れを暗示している。
「へ……変態っ! スケベ! ロリコン! ペドフィリア!」
我に返り、みるみるうちに顔を真っ赤にさせたミチは手当たり次第に近くにあった洗剤や柔軟剤のボトルや歯ブラシ、ソープディッシュといった物の数々を投げつけてくる。
「待て! 話を聞け!」
「この子どこから連れ出してきたのよ! 明らかに犯罪よ、犯罪! 断腸の思いだけどケーサツ呼ばなきゃケーサツ! おまわりさんこいつがシンでゴギァ!」
泡まみれのまま風呂椅子に腰掛け、窺うようにおれたちの様子を眺めていた幼女がおもむろに立ち上がったかと思ったら、どういうわけかミチに近付き、いきなり右の拳をミチのみぞおちにねじ込ませていた。
威力はかなり強かったらしく、勢いに任せておれを罵っていたミチが懐から取り出したスマートフォンを右手に持ったまま膝から崩れ落ち、そのまま床に倒れる。
「おい、大丈夫か! しっかりしろ!」
おれはミチの傍に駆け寄り上半身を起こすも、両目を×印にして気を失ったまま反応がない。
当の幼女は再び風呂椅子に腰掛け、早く続きをしようと言わんばかりにおれの左腕の袖を引っ張っているが、おれはミチを抱き上げるとそのまま脱衣所を出てリビングルームまで運び込んでソファに寝かせると、すぐさま踵を返して風呂場に戻って幼女の身体の汚れをゴシゴシ洗う作業を再開したのだった。