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エピローグ(エストザーク王国王都フォヴァロス・王宮)

「おめでとう!」


「君たちのおかげで国が救われた! ありがとう」


「まだまだ問題は山積してるけど、きっとうまくいくよ!」


 初めて足を踏み入れる王都フォヴァロスの王城最奥部に建つ王宮にある控え室で、おれたち六人は入れ替わり立ち替わりやって来る多くの人たちから次々と祝福の言葉をかけられていた。


 のちに『渋谷インシデント』と呼ばれることとなる一件が収束し、おれとミチとメルとソフィそして会長とアイシャ先輩の六人は警察により一時的に拘束されたが、会長がワドル家の顧問弁護士を渋谷警察署に差し向けたり、すぐさま反応したマレーシアの外務大臣が『自国民に対する不当な拘束』を理由に不快感を露わにしたりした途端おれたちは一晩で自由の身となった。しかし、日本政府は今回の件について看過することはできないということで省庁を横断した特別チームが創設され、断続的におれたちを調査対象とした洗い出しが行われることとなった。一方、三保ダムを占拠していた一万にもおよぶ歩兵師団は陸上自衛隊によって捕虜として拘束された上官を除きすぐさま撤退し、王国へと帰還した。


 異常な物価上昇の根源となっていた価格統制令は女王陛下の特別令により元老院や枢密院の決定を待つことなく運用が停止されたことにより物価が落ち着きを取り戻し、王立市場は再び息を吹き返しつつあると同時に、甘い汁を吸っていた汚職にまみれた役人や悪徳商人たちが次々とあぶり出される結果となり、このまま廃止になる公算が強くなった。


 ヘサックの丘でおれたちを急襲した刺客たちは黙秘を続けており、黒幕はまだ断定できないが、状況証拠から現在捕虜として日本政府に拘束されているスティラー卿らの関与が疑われていることから、真相が明らかになるのは時間の問題だろう。


 また、丹沢湖から北の丹沢山系一帯は当面の間関係者と住民以外立入禁止となり、今回日本側に住む四人は日本政府の許可を得た上で彼等が用意した黒塗りの高級SUVに分乗し、SPという事実上の監視役とともに王国へと立入り、王室主催の叙勲式に参列することとなったのである。


「それにしても驚いたよ。二階級特進で中佐になるとはな」


 紺色の着物を身に纏ったおれと、ドレス姿のミチが儀礼服姿のソフィに声を掛ける。


「一番驚いたのはこの私だ。もっとも、給金が上がるから昇進は受け入れたが、本営への異動は断ったけどな」


「バカな女だろう。せっかく私のお守りから解放されるというのに、よりによって世話役を続けることを選びおった」


 ソフィの決断に原宿で買ったゴシック・アンド・ロリータで着飾ったメルはソフィに向かって苦笑いを浮かべている。


「たとえメル様から何と言われようと私はこれでいいと決めたのだからいいじゃないですか。これからもよろしくお願いしますね」


「でもソフィ、本当にどうしてワタシたちと一緒にいようって思ったの?」


 ミチはソフィに素朴な疑問をぶつける。


「なぜなら本営でデスクワークなんかするよりも、君たちと一緒にいれば毎日のように知らないことを知ることができるんだぞ。これ以上にワクワクすることが他にあると思うか?」


 ソフィの言葉におれたちは一斉に声を上げて笑う。


「シン・ワタセ様、ミチ・クラナガ様、マーガレット・ワドル様、アイシャ・ビンティ・ハフィス様、メルキオーレ・ワイズマン顧問官、そしてソフィ・シグルーン中佐。お時間となりましたのでお迎えに上がりました」


 ノックもなしにドアが開き、エプロンドレスに身を纏った一人の女性が控え室の中に足を踏み入れ、おれたちに向かって一礼する。


 その女性の頭上からは白から黒のグラデーションの毛で覆われた左右一対の耳が生え、臀部のあたりから生えている、耳と同様に白と黒の毛で覆われた長いしっぽが彼女の右脛にまとわりついている。


「ありがとうラムダ。準備はできてるよ」


「さぁみんな。女王陛下との謁見の時間だ。くれぐれも粗相のないようにな」


「おう」


「うんっ」


「ああ」


「はいっ!」


「はっ!」


 メルの言葉におれたちは一斉に首肯する。


 驚きの色を隠そうとしない猫耳メイドのラムダを尻目におれたちは控え室を出て意気揚々と謁見の間へと向かったのだった。


ひとまずこれにて終わりとなります。

ご笑覧ありがとうございました。

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