あなたのギターが必要なの
とある大学の軽音部の新入部員の顔合わせ会に俺こと田辺翔は来ていた。先輩方と同じ新入部員が見る中で、各自自分の演奏や歌をみんなの前で披露してお互いを知るのが目的らしい。
ここの軽音部はかなり本気な人が多いみたいで、中でも11月にある大学祭ではオーディションで選ばれた1組のバンドだけが最終日のトリを野外ステージで飾る事が出来る。
(去年のライブ見て俺もこの大学に行こうって決めたんだよな)
「それじゃボーカル希望者から始めようか」と軽音部現部長の3回生高橋さんが言い新入部員の顔合わせ会が始まった。
何人か歌った後、「じゃ次歌ってくれる?」と高橋さん
「結城未来です。キーボード希望の佐倉円華と一緒にやってもいいですか?」
.と、黒髪ロングの綺麗な女の子が高橋さんに話かけた。
「いいよ〜」
佐倉さんのピアノに合わせて結城さんが静かに歌い始めた時、俺も含むこの場にいた全員が一瞬でその歌声に引き込まれていくのが解った。
(何て綺麗で澄んだ歌声なんだろう)
結城さんが歌い終わった後、何人かの新入部員が「一緒にバンドやろうって誘おう。」と言ってるのが聞こえてきた。
(争奪戦だな….)
俺は他人事のように考えていた。俺より上手くて目立つギターなんて何人もいるだろうし、結城さんと組むのはそういう人だろうと考えていた。
「じゃ次はギター行こうか?」
おれの順番はギター希望者の最後で他のギターを聴いていた。
(結構みんな上手いなあ.)
「羽倉健太です。多分ここに居る誰よりも上手いと思ってます。」
(かなりイケメンだけど自信家だ)
羽倉が弾き始める。確かに言葉通りめちゃくちゃ上手くて、しかもセンスあるギターだった。
(正直この後弾くの俺なんだけどキツいわ)
「じゃギター希望者ラストよろしく」
「田辺翔です。適当にアドリブで弾きます」
俺は出来るだけ平静を意識して何時も弾いてるようにギターを弾き始めた。弾き始めてしばらくして恐る恐る周りを見回してみるとニヤニヤしてる羽倉の顔が見えた。何となく嫌な感じがしたから別の方向に目線を向けると、俺のギターをじっくり聴いている結城さんがいた。その表情はとても真剣でそしてとても綺麗だと俺は思った。
「こんな感じです」
俺は演奏が終わりホッと一息ついてそう言ってステージから降りた。周りに目を向けると相変わらずニヤニヤしてる羽倉がいて、結城さんは佐倉さんと何やら話し込んでる様子。その後他のパートの演奏も終わり、新入部員同士での交流の為に先輩方は出て行った。そして早速羽倉が動く。
「結城さん一緒にバンドやろうよ」
(やっぱりあの2人が組む事になるのか)
「ごめんなさい。私もう組みたい人がいるから。」
結城さんは羽倉に断りを入れ、何故か俺の方に近付いてくる。そして…
「田辺君。私とバンド組まない?あなたのギターが必要なの。」
初投稿です。文才ありませんが頑張ります。