カップル成立!?
……愛してるゲームは終わり、無事冴えない君と黒髪ロングちゃんは死んだ。
具体的に言うと、机の上に突っ伏してから動かなくなった。
「二人とも、よく頑張ったなー。もう途中から二人とも意地の張り合いだったもんなぁ。っはっはっは」
一樹が爆笑混じりに腹を抱えながら言う。
まぁ、二人のおかげでこの場は大盛り上がりだ。
当の本人達はというと――。
「(うっくんに愛してるって言われた愛してるって言われた……!)」
「(香織ちゃんやっぱり可愛いだけどぼくは、ぼくは、ぼくはぁぁぁぁぁぁっ!)」
……こんな様子だった。
もうくっついちまえこいつら。
そうとも分からずに、一樹は再び割り箸をがしゃがしゃと回しはじめる。
「王様だーれだ! TAKE2!」
号令と共に、皆が各々に取り出す――その瞬間に、俺は冴えない君が3番の割り箸を入手し、同時に俺が赤いシールの貼られた割り箸を手にしたことが発覚した。
「おー、大親友! お前が王か。とても王って面じゃあないのになー! くっそー!」
何げに貶されたがまぁ今は気にすまい。それよりもやることがあるんだ。
俺は、「ゴホン」と大きめの咳払いをして注目を集めた。
そして、じっと三番の割り箸を持つ冴えない君を注視する。
『3番が、この中の誰かに告白する。それも、本気の思いで――だ』
俺のいった途端、冴えない君はびくんと肩をふるわせた。
同時に、黒髪ロングちゃんをそっと見つめる。
俺を注視してくれているな。いいことだ。
『告白された側は、真面目にそれに応えることだ』
金髪ギャルと黒髪ロングちゃんが両方ヒットする。
この場合は、金髪ギャルは冴えない君のことなんてどうとも思っていないだろうから、応えるのは必然的に黒髪ロングちゃんだ。
ゆっくりと席に座り、ウーロン茶をずるずるとすすったその瞬間、がたんと椅子を下げるのは冴えない君だ。
「香織ちゃん、あなたのことが今でも好きです! 付き合ってください!」
全員が度肝を抜かれる中で、ふるふると震えながらソファから立ち上がったのは黒髪ロングちゃん。
「私も、今までうっ君のことが忘れられなかった! 今でも愛してるの、うっ君!」
「本当に!? 香織ちゃん、それは本当なの!?」
「本当よ! 本当は、寂しかったの! うっ君が受験で忙しいって、会えないって言われて、寂しかっただけなの! 別れるつもりなんてなかったの!」
「香織ちゃん!」
「うっ君!」
突如、お互いが席を挟んで抱き合う。
合コン出席者は、全員「えーーーーーーっ」て顔だ。
まぁ、そうだろうな。正直俺もここまでとは思わなかった。
「ごめん、一樹君。ぼく、もう抜けるね!」
「私も! うっ君と仲直りできて良かった! 誘ってくれてありがとうございます!」
そう言って、二人はいそいそと英世さんを二枚ずつ置いて手をつないでイチャコラしながらお店を出て行った。
合コン会場に残った俺を含めた六人全員が、シーンと静まりかえっていた。
何だったんだ、あの竜巻みたいな奴等は……。