いざ、合コンへ!
俺の大学は共学制だ。
文系大学三年ともなると、バイト漬けとサークルの飲み会がほとんどとなる。
バイトも終わり、授業も代返を使って適当にサボった俺がいるのは、居酒屋の前だ。
夜六時から開始される合コンへの参加だ。
最初こそ、乗り気ではなかったが少し前から友人の一樹には誘われていた。
俺はそれを断り続けては居たのだが、今この能力を持っているならば話はかなり変わってくる。
今から来るのは女の子。男6,女6の完全な合コンだ。
男側の方は、俺たちが通う共学制の大学から6人。
そして女性側の方は、近くの女子大の6人。
かなり理想的な形だ。
合コンってのは、基本的に「うぇ~い」系の大学生達がやるもんだと思ってる。
その後、適当にLIMEでも交換して、あわよくばそのままエッチなホテルになだれこんでみたり、家に連れ帰ってタノシイコトを思い思いにやってみたり……。
俺はお世辞にもモテる方の人間ではない。
こういった時には大抵数合わせやメインのイケメンの引き立て役に使われる程度の人間だ。
だが、この能力を持ったら外見なんて全く関係ない。
能力が全てだ。力が全てだ。俺のこの能力の前ではイケメンもブサイクも塵芥同然だ。
「おー、お待たせお待たせ」
俺の目の前に現れるのは、「THE うぇ~い」の称号を持つ男――一樹だ。
首元にはよく分からん銀色のネックレスがかけられ、若干筋肉質なその身体とワックスでがっちがちに固めた茶髪。
こういう奴に限って表面上の笑顔は最高に人が良さそうだ。
ホント、なんでこんな奴と面識あるんだろう。住む世界がまるで違う気がする。
いっそ、こいつを洗脳して勝手にどっかで自滅してくれねーかな……なんて思わないこともないが、今日の標的はこいつじゃない。女の子だ。能力の無駄遣いはやめておこう。
その後ろからぞろぞろと続くのが……。
オタク 一樹 イケメン 冴えない奴 爽やか青年
なるほど……そういや手前の眼鏡オタクは、爽やか青年といっつもつるんでる奴だったか。
一樹ともう一人のイケメンは言わずもがな、冴えない奴は知らん。が、俺とおんなじ空気を醸し出している気がする。
後で軽く挨拶しとこう。気が合うかもしれない。
「あー、男子結構揃ってんじゃーん」
俺たちが居酒屋の前で集まったところで、反対方向の駅から歩いてきたのはひとかたまりの女子集団だ。
茶髪美女 金髪ギャル 黒髪清楚ロングストレート 黒髪ショートカット美少女 身長およそ140cm後半のちっちゃい子 黒髪ギャル
凄い。っつーか女子大って美女しかいないの? こっちのオタクなんてもう顔真っ赤にして息荒いんだけど。
慣れたように、一樹は「んじゃ、なかはいろっか」とにっこり爽やかスマイルで皆を中に導いていた。
「ねぇねぇ、君、とりあえずLIME交換しない? LIMEツメツメってゲームがあるんだけど――」
「あー、それ知ってる。アタシもやってんだ」
「え、ホント!? そりゃ、気が合いそうだね~。とりあえず、なかはいって色々、ね!」
爽やか青年の爽やかスマイルがやんちゃ黒髪ショートカット美少女を一気に貫いていく。
やべぇ、リア充力高すぎる。何だこいつ。
「……ふぉ……ふぉ……」
オタク男子は眼鏡をくいっとあげて女子を変な目で見ている。
そんなオタク男子を少しだけ一瞥して、冴えない系男子も居酒屋へと入る。
……俺もとりあえず入っとくか。
さぁて……この能力、どう使ってやろうか……。