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最強の聖女は不良品?  作者: 白城シロ
~幼少期編~
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「魔界に生まれて」

 




 エカテリーナ・テレサは、魔界ではごく一般的な家庭に生まれた。父親はインキュバス、母親はサキュバス。


 人間界や天界と違い、魔界にはあまりに多くの種族がいる。魔界の生物学的に近しい種族同士が結婚し、子を成すのが一般的で、安定すると言われていた。


 無論、遠い種族が結婚して子を成すことも出来る。例えば、ゴーストと龍族の組み合わせなんかも可能だ。さらにその場合、両方の長所を色濃く受け継ぐ優秀な子になることが多い。


 が、その場合、出産の際に母にも子にも大きな負担がかかり危険なため、かなり強力な身体能力を持つ女性でなければ死んでしまうことも少なくない。


 故に、サキュバスとインキュバスの間に生まれたエカテリーナは、非常に普通の女の子であった。


 サキュバスの最たる特性は、魔力操作。多種多様な魔法の習得に長けるため、サキュバスの基本は魔法を極めていくことだ。


 エカテリーナの両親も、エカテリーナには身の丈を弁えてもらい、適度に魔法を習得させて、適当な所に就職させればいいと思っていた。


 しかし、エカテリーナはそうはならなかった。






 エカテリーナは2歳になる頃には既に言葉を覚え、両親とのコミュニケーションも普通に取れるようになっていた。知性の芽生えが早いのも、サキュバスの小さな特性だ。


 子供らしく好奇心旺盛で、色んな疑問を両親にぶつけるようになっていた。……それだけならよかった。


 しかし、エカテリーナは魔族としては少し変わった子だった。


 父と散歩していて、盗みを働く魔族を見かけた時。


「ねえパパ。どうして彼はどろぼうをしたの?」

「そりゃあ、立派な魔族になるためさ。まともに働かないで盗みをするなんて、若いのに彼は優秀だな!」

「でも……泣いてるよ?」

「ん? ……ああ、あの被害者の女か。力が無いからあんな目に遭うんだ。お前は、泥棒をしていた彼のように立派な魔族になるんだぞ?」

「…………? うん……」


 エカテリーナは、被害者の女性の涙が気になった。可哀想だと思った。……それから、助けてあげたいと思った。


 他にも、


「あっ、タバコを灰皿に捨ててないよ? なんで?」

「お仕事をサボってるのはなんで?」

「あの子、いじめられてるよ? どうして誰も助けないの?」


 そんなことを言って、よく両親を困らせた。


 魔界では、悪事を働くことこそ立派な魔族の証。泥棒や強盗は、ヒーローも同然。それはエカテリーナも空気でなんとなく感じ取っていたのだが、彼女にとってはどうしても疑問だった。


 この子は、不良になるかもしれない。


 エカテリーナの両親は、そんな不安を抱かずにはいられなかった。





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