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「なんで、そう思うんだよ」
「なんとなくよ。でも、今の話を聞いたら、思春期の女の子はみんなあなたにそういう気持ちを持つわよ…… で、実際どうなの?」
「何が?」
「恋愛よ、恋愛! あなただって、それなりに経験しているでしょ?」
恋愛ね…… 恋愛か。もちろん、この場合は人との恋愛だろう。異性が好きなものどうし、手を繋いだり、キ、キスしたり…… だろうな。しかし、恋愛と聞いて、僕の頭に出て来るのはモクモクとしたおいしそうな綿菓子のような雲と情景美しい空しか思い当たらない。
「ねぇ、まさか一度もしたことない…… とか、言わないでしょうね?」
空希が僕の考え込む姿を見てそう察したのだろう。僕にそれでも本当に男の子? といわんばかりの疑いの目を向けて来た。そんな目線を向けられると恥ずかしさで身が焦がれそうになる。
「し、したことないよ! 僕は空に恋愛しているからそういうのはいいんだよ!」
僕はそんな視線に耐えかねて正直に白状することにしてしまった。耐えかねた恥ずかしさを晴らすかのように出した声は僕が思ったよりも大きくなってしまったのだろう。僕の声は人影が薄くなった廊下を反響していった。僕の耳に自分の声が聞こえ、しまったと、」思ったが時すでに遅く、クスクスとした微笑の声が廊下の奥から今度は僕の方に反響して聞こえてきた。僕の顔はもう、耳の先まで真っ赤だ。
傍に居た、空希と目が合う。
「なんか、ごめんね…… ほんと」
空希が気まずそうに僕に謝った。どうやら、今の僕の姿は彼女がいじれないほど惨めな姿をさらしているみたいだ。
「でも、いいんじゃない! 君の青春はこれからだ!」
空希は熱血教師見たいなことを言って僕を励ましこの雰囲気を和ませようとしたが、今の僕には逆効果で余計に惨めさが積もった。
「僕のことはもういいよ…… 君はどうなんだ?」
「え?」
僕はもうどうにでもなれという気持ちで空希に聞いたのだが、彼女は少し顔を赤らめた表情を僕に見せた。
「だから、君はその…… 恋愛とかしたことあるの?」
なぜか、その問いに自分まで緊張してきた。
「…… あるよ」
彼女は静かにそう答えた。それと同時に僕の心もキュッと締め付けられた。
「でも、付き合ったことはないわ。ずっと、片思い中」
片思いという言葉を彼女ははかなげなく、廊下から見える空を見ながら言った。
彼女も空に恋をしているのだろうか…… 一瞬そんな思いが浮かんだが、彼女の澄んだ目はそうではないだろう。空に思う人を見て、そのどこまでも見渡せそうな澄んだ目で海よりも広い空の中を必死にさがしているのだろう。
僕はそんな真っすぐな彼女に思われている人を純粋に羨ましく思った。
「ほんと、罪深い人よね。全然、私の気持ちに気づいてくれないだもん!」
「どうして、それを僕に言うの?」
空希が僕を見て来た。
「ふふふ、なんとなくよ」
「なんとなく?」
「そう、なんとなく」




