桜
「だー!もう!!」
とある学園に、少女の叫びがこだまする。
ここは私立神木学園。
GODSの少年少女は原則この学園に所属することが定められており、幼等部から高等部、大学で構成されている大規模校だ。
通うのはGODSばかりではなく、一般の生徒もいる。
多彩な学科に施設に加え、優秀な生徒が多いと全国でもなかなか知名度のあるところだ。
もちろん双子…千羽と千誓も、この学校に。
「千羽ちゃんたら、今日はご機嫌ななめですねぇ。」
屋上で千羽の傍らに座り、微笑みを投げかけているのは、彼女の数少ない友人の1人である小舞桜花だ。
「当たり前だ!!あいつ…ぜってーわざとに決まってる…嫌がらせだ…そうに決まってやがる…。」
空を仰ぎ、ぶつぶつと悪態をつく千羽。
そしてそれを諭す桜花。
「そんなに気にすることないよ、千羽ちゃん。
司令さんの言う通り、みんな忙しくて作業が滞ってるのかもだし!
例えわざとでも、きっと千羽ちゃんたちのことを心配しての行動なんだよ!」
そう、千羽がこんなにもイラついているわけはそこにある。
本来ならばGODSに加入するための手続きは3日ほどで済む。
…そのはずなのだが。
千羽と千誓の場合はどうしてか、それが1週間に引き延ばされてしまったのだ。
「ああああでも、でもよぉおお…」
桜花の言葉にもまだ納得がいかないのかぐずり続ける千羽。
「あっそうだ!ハイ、これ!!」
そんな千羽に、桜花はピンク色の可愛らしいつつみを渡す。
「ん…?なんだこれ…?」
「お誕生日プレゼント。
ふふふ!遅くなってごめんね!
改めて、千羽ちゃん!お誕生日おめでとう!!」
満面の友人の笑みと可愛らしいプレゼント。
「お、おう…ありがとな…」
先ほどまでのイラつきも忘れ、自然と笑みがこぼれてしまう。
(ああ、単純だな、かわいい。)
そんなことを思いながら、桜花は大切な親友の為に楽しいお話をつづり続ける。
そこに、満開の桜が咲くのなら。