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部屋を出た涼子たちの目に飛び込んできたのは、忠志の妹、美鈴の姿だった。
警察から連絡を受けてやってきたのだろう。
美鈴は通路に置かれた長椅子に座って、うつむいて泣いていた。
忠志と別れた後も、時々、美鈴とはメールで連絡を取り合っていたが、実際に顔を会わせるのは久しぶりだった。結婚式の時にほんの少し言葉を交わして以来だった。
こんな形で再会することになるとは思っても見なかった。
肩が震えている。
「美鈴ちゃん……」
涼子が声をかけると、美鈴は顔をあげ立ち上がった。大きな目から涙が溢れ、頬を伝っている。
そうやって素直に涙を流せる美鈴が少し羨ましく思えた。
「お姉さん――」
そう言って美鈴は涼子に抱きついた。「どうして……どうしてお兄ちゃんが殺されなきゃいけないの?」
胸が痛かった。自分の胸のなかにある言葉を、美鈴が口にしてくれている気がした。
「美鈴ちゃん」
忠志と美鈴がどれほど仲が良かったか、それは涼子もよく知っている。歳がわりと離れていることもあって、美鈴が一人暮らしをするようになってからは忠志が親がわりとなって美鈴の面倒を見ていた。涼子の目から見ても美鈴に対する忠志の愛情は嫉妬するほどのものだった。
涼子にとっても美鈴は自分の妹のようにかわいかった。
知らず知らずのうちに、涼子の目からも涙が溢れていた。それは忠志を失ったことよりも、美鈴を想っての涙だった。
涼子はぎゅっと美鈴の身体を抱きしめた。
「ねえ、美鈴ちゃん。私、今日は恵美さんのところに泊まろうと思っているの。美鈴ちゃんも一緒に行かない?」
その言葉に美鈴はゆっくりと顔をあげ、傍に立つ恵美の顔を見た。
「ねえ、行こうよ」
涼子はもう一度言った。だが、美鈴は涙をぐっと堪え、唇をかみ締めるとゆっくりと首を振った。
「ううん……大丈夫」
その瞳には何か強い力がこめられていた。
「美鈴ちゃん……」
「私……この人とは一緒にいたくないから」
美鈴ははっきりとそう言った。