第九十六話 再会
何もかも何気ない感じで毎日が過ぎた。ヒーロー部のみんなとは学校で顔を会わせたが特に決戦の話をする者はいなかった。
「とうとう明日か……」
ショーは自宅のベッドで寝転び、天井を見上げた。いつから付いたか分からない黒いシミが一部顔を覗かせている。
今までは一週間という日が長く感じたが、今回は自転車の立ちこぎのようにあっという間に過ぎていった。明日の決戦はテスト前夜のドキドキ感であるものか、遠足前のワクワク感であるかどちらか分からなかった。
「コン」
窓に虫が当ったか、しんとしていないと分からない程小さな音がした
。ショーは身体を起こし、窓の方へ寄ったが何もなかった。
窓を開けると秋が近づいているか少し肌寒い風が吹き込んでくる。少し下を覗くと紙屑が落ちているのが見えた。
「何だろう」
ショーは一階へと降りて行き、玄関の扉をそっと開け、裏庭へと行った。
暗闇ではあるが月の明かりと外灯ですぐにそれは見つかった。
ショーは紙屑を手に取り、ゆっくりと開いた。
「公園へ……一緒に話そう」
鉛筆で書かれた小さいその言葉はいたずらなのか分からないが妙に胸騒ぎがした。ショーは紙屑をポケットに入れ、パジャマのまま公園へと向かった。
仙樹公園は徒歩2分で着く場所にある。小さい公園ではあるが、すべり台に鉄棒、砂場が設置され、時には親子連れの姿を目にする良い公園だ。
ショーは公園の入口に立ち、辺りを見回した。少し遠くの方であるが、うっすらと黒い影がそこに立っているのが見える。
「古いやり方だが、よく躊躇せずにここまで来たな。お前のそういう正直な所がいいんだけどな」
「誰!?」どこかで聞いたことのある声。少し大人びいた声だが……
「俺だよ……火渡亮さ。久しぶりだな翔太」
小学校以来行方不明になっていた親友がそこには立っていた。




