第九十五話 決戦の舞台へ
「今何って言った?」ウルフは笑いをこらえて言った。
「何度も言わせんなや。これからはラッシュって呼んでくれや。そっちの方が親近感わいていいやろ」
ヒーロー部ミーティング室でみんな笑い転げた。
「パトラッシュって!!」
「そんなこと一言も言うてへんわ。アイちゃんも何か言うてや」
アイは口に手を覆い横に何度も首を振った。笑いすぎて声にもならない状態である。
「見直したぞ。お前にもそんな笑いのセンスがあるとは」ウルフはツッコミのかまえを取り、ラッシュを茶化した。
「そんなんないわ。もう面倒くさいわ、言わんとけば良かったわ。んでスパイダーの事どうするんや?」
「すまんすまん、そうだったな。二人のおかげで大分場所が絞り込めた。侵入経路については既にキンジョーが対策を練っている。後は何時乗り込むかだ」
「明後日にでも乗り込んでみてはどうですか?」リボンは笑いを止め、真剣な眼差しで言った。
「良い案かもしれないけど成功確率は約20%です。図書館にて罠に引っかかった事も敵はもう知っている事でしょう。守りの士気も上がっていることだろうし、もう少し待ってはと思います」キンジョーは眼鏡をくいっと上に上げた。
「実際具体的には?」
「一週間後……九月十一日の夜です。天気予報は雨となっておりますので、雨が音を消してくれます」
「暗闇は敵の方が上手ですよ」マゴは注意深く言った。
「承知の上です。全滅を避けるためにも、相手の裏をかく背陣を組んで望まないといけません」
「決まりだな……」ウルフはみんなの顔を見渡し言った。
「一週間後九月十一日昼間十二時にてここで会おう。作戦を発表次第敵の根を、スパイダーを倒す!!」
みんなは椅子から立ちあがり、それぞれの拳を天に突き上げた。
「それまでは自由行動だ。無理にここに集まらなくてもいい。思い思いの一日を過ごしていくがいい。ただし学校は平常通りだぞ」
一部の拳がへなへなと花が枯れるようにしぼんでいった。
「本日はこれにてネフェス団解散だ!!」
「あれ?」
一同が帰る中ショーは向かい側の窓ガラスを振り返った。
「どうしたの?」リボンも振り返りショーの目線をたどった。
「いや……あそこの窓ガラスに白い影がいたかなっと思って」
「そうなの? でもここを通る人ってめったに見ないよ。気のせいじゃない?」
「うん……そうだね」
二人は部屋の電気を消し、廊下へと出て行った。決戦の日まで後一週間と迫っていた。