第九十二話 死の間際
「俺の能力はな……『スケッチ』や。描いた絵を実像させて動かす事が出来るんや。例えば炎もこの通りや」
本間は炎の絵を描くと目の間に炎が広がった。
「持続時間は限られているし、描けない絵も多くある。例えば人の死を描いた絵とかな」
「自分の分身が横にいた時はびっくりした。あの世に行ってしまったんだって……」
ショーは振り返り思い出した。死ぬ間際の自分を思い出すと今でも身震いを起こしてしまう。
「フォッフォッフォッ」
「何がおかしいんや」
「いや、あの状況でよくそんな考えを思いついたなと感心してのう。愉快なコンビよ……どれわしの命もあと3分だな」
「えっ!?」
「この能力はな生きるか死ぬかなんじゃ。勝てば生きて、負ければ死ぬ。そなたたちが勝ったため、わしは死ぬんじゃ。人間が死ぬなんて意図も簡単な事よ。何か聞きたい事はないか? 褒美に答えてやるぞ」
周りの本棚の歪みがなおもひどくなっている。この空間が消滅しそうになっているのか。
「スパイダーはどこ?」ショーは身を乗り出し聞いた。
「……この図書館から西へ一〇キロほど行った所に古城がある。そこに奴はいるよ。」
「どんな奴?」
「人前には顔を出さない奴じゃ。頭はずるがしっこく逃げるのも早い。人を平気で見捨てる奴じゃ」
「それ以外に敵は?」
「知らん、わしはそこに一度しか行った事がないからの。それよりも気になっていたんだが……」
サンクタリーヌは奇妙な咳払いを一度して言った。
「貴様の能力……誰か教えた師がいるじゃろ?」
「なんでそれを知っているんや?」
本間は後ずさりをした。自分の聞かれたくない事を聞かれ、逃げそうになる。
「確か名前はリリー。その特殊な能力は逸材にして認められた奴じゃよ」
「そいつの名前を……名前を言うなーーー」
本間の叫び声が部屋中に響き渡った。歪んだ空間が本間の叫びにより、別空間を繋ぐ穴となって辺りに出現した。