第七十六話 リボンの決意④
「自分らしく生きろ」
文章というよりも言葉だった。短くではあるが深く熱い言葉であった。
「自分らしく……」リボンは何度もその言葉を繰り返した。
繰り返す事に心が晴れていくような気分だった。環境に支配されていた生活。自分というものを持っていて気がつかないフリをして生活していた日々。ママとワタシ。私の人生という真っ白なページに新たな息吹が吹き込まれた気がした。
「私の人生は……私で決める!!」
リボンは扉を大きく開け、下へと降りて行った。
「これからどうするんですか?」ショーは二階の窓の方を見ながら言った。
「リボンが来るまで待つ!」ウルフはその場で腕組をし、立ち往生した。
「それでも来なかったら?」
「待つ。来るまで待ち続ける!!」
「面白そうね。わたしもずっと彼女を待っている!」アイはウルフの隣に立ち腕組をした。
「アイちゃんが待つなら僕も」マゴと本間は割って入るように立つ。
「えーと」気づけばショー以外は全員腕組をして立っていた。横から見ると奇妙な光景だ……が
「僕も待つ!!!」誰よりも大きな声でそう言った。
「ママ!!」
「何よ。慌てた顔をして。部屋にいなさいって言ったでしょ」
「でも、友達が来てるから……みんな待っているから……」
リボンは息を整えながら言った。階段を降りる途中でこけそうになって冷や汗をかいたせいもあった。
「あの人たちは帰ったわよ。玲奈も窓から見てたの? 全然美術部の部員に見えそうになかったわよ」
「ごめんなさい。ママに嘘をついてたの。あの人たちは美術部員じゃない。ヒーロー部のみんなよ。悪を倒す正義の味方」
その時ママの顔が聖母マリアから鬼武者に変わるのがすぐに分かった。
「ヒーロー部ですって!? 玲奈そんな奴らと共にしてたの? 危ない目にあったんじゃないでしょうね?」
「ごめんなさい。ヒーローは危険と共に生きていく運命なの。もちろん危険な事もあるわ。でも困っている人たちを助けたいの。世界は危険に晒されているの。嘘をついていた事は謝るわ。ごめんなさい」
「謝ればいいもんじゃないのよ。玲奈は私の娘なの。私のように上品に美しく生きて行くのよ。あいつらとあなたの世界は違うのよ」
「違ってなんかいない。私はみんなと一緒の世界にいたい。初めて自分がやってみたいことなの!」
「玲奈……とうとう反抗期に入ったの? どうして私の言う事が分からないの?」
「分かるよ。痛いほど……でも今は自分が見つけたやりたい事に進みたいのよ」
リボンは玄関の扉へ向かって走って行った。扉の向こうには希望が……みんなが待っている。もうすぐ籠から出た鳥のように自由になれるんだ。
「……なら仕方ないわね。拘束レベル3発動、はんにゃ人形!!」
突如天井から高さ一メートルほどのはんにゃの仮面をした人形が何体も地面に落ちてきた。それぞれのはんにゃ人形は人間のような軽やかな動きをし、
リボンを取り囲んだ。
「玲奈……あなたが回生するまで、はんにゃがあなたに罰を与え続けます。こんな事はしたくないのよ。でも分かってちょうだい」
リボンの嘆きの叫び声が家中に響き渡った。