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孤独なヒーロー達  作者: 林 秀明
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第七十三話 リボンの決意①

「リボンの家一度も行ったことがないね」

ショーはワクワクしながら言った。

「そうだな。おれも一度も行ったことがないな。いつも近くでバイバイしてたから。ウルフは?」

「俺は一度だけ家庭訪問に行ったことがあるが豪邸だぞ。みんな腰抜かすなよ。あとリボン邸ではニックネームは慎め。怪しまれぞ! 関西弁も控えめにな」

「俺はいいけど関西の人馬鹿にしやんといてくれる?」本間はブツクサしている。

「リボンって一人っ子なんですか?」アイは心配そうな顔をした。

「そうだ。家庭訪問の時はお母様しか居なかったが……執事は少なくとも二人はいたぞ」

「執事!!」

マゴとショーは顔を見合わせた。貴族関係の物語でしか聞いた事がない単語が身近に実在するとは思えなかった。今まで共にしていた仲間の一人が高貴な者だったなんて。

「ここだ」

一同は門の前に立った。横幅十メートルほどの鋼鉄でできた門が頑丈に閉められている。門の向こうには石畳の道が奥まで続いており、奥には大きな赤い屋根の洋館が建っている。

「色んな芸能関係の人の家を見てきましたけど、これは別格ですね……」

キンジョーは曲ったメガネを整えながら言った。

「童話に出てくるメルヘン城みたいですね」アイはウキウキしながら親友に会えるのを楽しみにしている。

「ごちゃごちゃ言わずに行くぞ。ここからは変な事を言うと追い出される可能性があるからな。俺が仕切る」

ウルフは呼び鈴を鳴らした。


「何か御用ですかな?」しわがれた男の声が呼び鈴から聞こえてきた。

「工藤玲奈さんの美術部の顧問をしております時寺です。玲奈さんに何度かご連絡させて頂いているんですが、不通で……ご心配になってご訪問させて頂きました」

「他の人たちは?」

「その美術部の仲間となります。無礼ながら皆心配しておりまして」

「少々お待ちを……」

「玲奈はあいにく体調を崩していて、誰ともお会いしたくないのよ」呼び鈴から女性の声がする。おそらく奥様だろう。

「元気かどうかだけでも見たいので少しだけでもよろしいでしょうか?」

「感染的な病気かもしれないので、みなさんに部屋に入っておくわけには…」

「絶対嘘だよね」ショーはぼそっと言う。

「しずかにせんか」本間はショーの頭をグイと下に押し付けた。

「そうですか……また改めて来ます」

ウルフは残念そうに一礼をして呼び鈴から離れた。

「また今度にしよう。今日は退散だ」

みんなでその場を離れようとした瞬間、突然鋼鉄の扉が大きな音をたてながら左右に開いた。呼び鈴から「どうぞ」としわがれた男の声がした。


「どうして門を開けるのよ!」玲奈の母は怒った顔をした。

「いくら何でも客人と顔を合わせないで引き返すのは我が工藤家として失礼にあたりますよ。それにあの男は……」

「まぁ、いいですわ。会ってすぐに帰しますから」

洋館の大きな扉が今開かれようとしていた。

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