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第七話 救出-ムーブ・ザ・ベンチ
寝室を出ると、廊下はサウナ状態だった。壁を手で触ると火傷を負いそうだ。1階へ続く階段を見たが、1階はとてもじゃないがいける状態ではない。
「逃げ道がないわ」奥様は悲観し、少しふらついた。
「しっかりしてください。大丈夫です。僕にまかせてください」
翔太はそう言うと、娘さんを抱えた奥様をトイレへ入らせた。
「いいですか? 便器へ座って目を閉じておいてください。僕が他のトイレへ瞬間移動させます。周りが静かになったら、すぐにその場所から離れてください。行きますよ」
翔太は奥様を便器の上へ座らせ、自分は年老いた婦人のトイレを思い浮かべた。
「よし! 見えた! ムーブ・ザ・ベンチ!!」
次の瞬間奥様とヒロミちゃんは一瞬にして消えた。
「よし! 次は僕の番だ」