第六十九話 バーナーの逃亡②
「はぁはぁ……あの女やっぱり油断できなかった。スパイダー様に報告しないと……」
バーナーは居酒屋が立ち並ぶ小さな路地を左へ右へと突き進んでいった。
「駅まで行けば大丈夫だ。奴らも一般の前では無茶な行動は出来ないだろう……」
「そうはさせないよ!」
ショーはアパートの二階から飛び降り、長棒をバーナー目がけて振り下ろした。が、間一髪で交わされてしまった。
「ちっ!! さっき撒いたはずなのに……」
バーナーはショーが体勢を整える前に、左の狭い路地へと入って行った。
「待て! 逃がすか!」
「俺のスピードに奴らは追いついて来れないはず……なのになぜ平然と先回りする事が出来るんだ? 狭い路地と階段で出来た複雑なこの地域を探す事は容易でないはず……」
バーナーは前を走りながら、何度も後ろを振り返った。やはりショーやその他の者が追ってくる気配はない。なのに…
「ここは通さないぞ!」
「ちっ! またお前か!」
(いつも現れるのはショーと呼ばれる小さいガキ。なぜだ? なぜあいつだけが先回りしているんだ)
「デジャヴか? それとも俺が幻惑に惑わされているのか?」
バーナーは走り慣れたはずの路地でさえ、疑問に思うようになった。あの赤い煙突の温泉……
「いつの間にか、駅から離れているぞ」
「見つけたぞ、待て~」
振り返るとマゴが後ろから追っかけていた。手には手刀が握られている。
「ああ~もう。奴ら、マジだな。巣に戻って応援を呼ぶしかないか」
バーナーはさらに加速し、マゴを振り切ろうとした。
「あれ、ここ行き止まりだったか?」
いつも慣れているはずの路地。しかしそこには二メートルほどの壁が立っていた。
「ちっ! 右へ回って通り抜けるか……」
右へ回って走りぬけようとした時、目の前には本間が立ちふさがっていた。
「ごくろうさん。もう将棋も詰め所やな」
「ちっ!」
後ろを振り返るが、マゴと合流したショーの二人が立ちふさがっていた・
「追いつめたぞ!」
バーナーは三角飛びを試み、二階の窓へ飛び移ろうとしたが、雨に触れた壁で足を滑らしてしまった。
もう目の前には三人が立ちふさがっていた……