第六十七話 バーナーの攻防⑤
「『S』って誰!?」アイは俯いた顔を少しあげた。
「内緒だよ…ブラック・ⅰ団の勢力を拡大する足回りのキーパーソンだよ」
「それってスパイダーのこと?」
「シー!!」バーナーは再度周りをキョロキョロする。
「そうだよ。けどその名前を言っちゃ駄目だ。僕殺されちゃうよ」
「分かったわ。じゃあ言わない。その人はどうやったら会えるの?」
「…ここでは言えない。ほら、分かるだろ?奥の部屋へ行こう。…そこで話す」
「分かったわ」
バーナーは立ちあがり、奥の部屋へと向かって行った。
アイはウルフの顔を覗き、一瞬頷いてから席を立つ。
「おい!!そこの兄ちゃん!!」通りすがりのバーナーをウルフは呼んだ。
「はい‥何でしょう?」バーナーはウルフの方へ振り返った。明らかに動揺している様子である。
「ビールもう一杯くれ!!さっきから店員を呼んでいるんだが一向に来ん!!」
「すいません、少々お待ちを!!」バーナーは別の店員に耳打ちをし、ウルフに一礼をして奥の部屋へと入っていった。
「あとはまかして…」
「あぁ」アイはウルフの横を通り過ぎる時小声でそう言った。チャイナドレス風の服が歩くことによってひらひらする。
扉の先はぼんやりとした暗がりであったがアイは迷わず入って行った。
古い扉が閉め終わると同時に注文したビールがウルフの前に出された。
ウルフはぼんやりビールを眺めていた。