第六十六話 バーナーの攻防④
「なんだい話ってのは?」バーナーは一度グラスを時計回りに揺らす。氷の落ちる音が店内に妙に響いた。
「あの…」そこでアイは一度言葉を止める。
「ずっと誰かに狙われているの。先週からずっと…常に人の視線を感じる。家の中でも」
「心当たりはないの?君がスターだから目立って当り前じゃあ」
「私も最初そう思ったわ。でもそうじゃないと思う。憧れやファンの視線というよりも嫉妬や憎悪のような」
「そうか」
「…」
少しの間沈黙が続いた。バーナーはグラスを揺らすのをやめ、じっと柱時計を見つめている。
「そこで相談があって来たの。今晩だけでもあなたの家に居させてくれればと思って。もし無理でも1時間か2時間だけでも居させてくれれば」
「…!!っ」
「お願い!!」
バーナーは息を飲んだ。爪をかじったり、周りを少しキョロキョロと見回した。
「俺は…無理だよ。実家だし。そこを誰かに見られたら君も問題だろ?」
「そうね…無茶言ってごめんなさい…忘れて……、もしあなたじゃなくても誰か頼りになる人がと思って」
「…」
「色々話してくれたでしょ。例えばブラック・i団の事とか、あなたなら私に道を示してくれると思って」
「…」
「ごめんね。結局押し売りみたいになって…やっぱり…」
「Sならなんとかしてくれるかも…」
長い夜はまだまだ続く…




