第五十五話 対面
アイのマネージャーは遠くの方から大きく手を振っていた。それはこっちへおいでの手招きと二人は思っていたが、それは誤算だった。こっちへ来るなの合図だったのだ。
案の定近くにアイちゃんがひょっこり顔を出した。アイは二人を見るなり雲がかった顔をした。
「あなたたちここで何してるの?」
二人はアイから目をそらし、下を向いた。気まずい沈黙の中、マゴは
「ショーを誘って家族で泊まりに来ているんだ。近くに遊園地があるでしょ。そこで…」
「何も言わないで。もう分かってんだから」
アイは会話を閉ざした。きつい言い方というより少し哀しそうな言い方だった。
「この手紙読んだでしょ。それとこれ近くに落ちていたわ…」
取り出されたのは青のスマートフォンだった。マゴが赤に対して僕は青にしようと言ったシーンが一瞬蘇る。
「ごめんなさい」
二人は無意識にその言葉を発した。それしか言いようがなかった。
アイは追い詰めた名探偵のように二人の前を行き来しながら
「謝って済む問題じゃないのはその歳でも分かるでしょ。私の部屋に侵入したんだよ。罪なんだよ。そして犯した罪は決して消えないんだよ」
またも哀しそうな声が響く。以前と違って心が不安定だ。
「何でこんな事するの? どうしてここまでするの?」
アイは泣きそうな声で言った。
「仲間だと思ったから…」
マゴは消え入りそうな声で答える。
「うっさい…」
アイは後ろを向いて歩き始めた。もうすぐに警察に渡されてしまうのだろうか。後ろでマネージャーがどうしようもない申し訳なさそうな顔で成り行きを見守っている。
「約…束しなさい」
アイもまた消え入りそうな声で言った。
「えっ!?」顔を見上げる。
「今から3つ言う事を必ず約束しなさい!!」
アイは震えた声で二人の方へ向き直り言った。