第五十三話 行く末
「いけたのかな?」
ショーはひやりとした顔持で言う。
「さぁな、わかんねぇ。とりあえず安心だろ」
マゴは安堵の顔をしながら、トイレットペーパーで自分の額の汗を拭いた。
「ここ、どこだ?」
周りを一度見回し、不意に言った。
「僕の家だよ。切羽詰まってここしか思い浮かばなかった…」
「本当か? 仕方ねえな。今日遅いからショーの家で泊っていいか?」
仕方ねえなの意味が分からなかったが、ショーは快諾した。時間が遅い事もあったが自分の家に人が泊まりにくるのは小4年以来の亮の時だった。
「とりあえず2階へ上がってよ。まずは母さんにご飯の事話して置くよ。ウルフにも連絡しなきゃ」
「わかった。今回は俺がウルフへ連絡しとくよ」
マゴは勢いよくショーの膝から滑り落ちた。
「本当か?よく奇抜な行動出来たよな」
電話越しでウルフが笑いながら、声をかける。お咎めというより自分たちの成長を褒めてくれているようだ。
「まぁ、その件についてはしばらくはアイとは接触しない方が良さそうだな。またタイミングを見て計らうか」
少し残念そうに言ったが、ウルフの声は明るかった。
「そっちはどうですか?」
「うーん、マリ姉の消息が分からなくてな。出会った近くのキャバクラを当たったんだが…もちろん、リボンは外に置いてだぞ。連絡先にも連絡したが電波が届かなくてな。今はグダグタ言っても仕方ない。まずは明日昼頃にヒーロー部へ集合し、今後の作戦を練るか!!」
「そうですね。分かりました。お休みなさい」
マゴは携帯電話を切り、ベッドの枕元へ置いた。
「いいのか?ベッド占領しちゃって…」
「いいよ。下で寝るほうが好きだから…どうだった?」
「向こうはマリ姉の消息が掴めないらしい。明日昼頃集合して作戦練ろうって。あと俺たちの行動誉めてたよ、電話越しに笑いの声が大きかった」
「ふふ、そうなんだ…」
ショーは肩の荷が下りた。ウルフから今回の行動で自分たちは見捨てられると思っていた。いい方向で結果が繋がって良かったと感じる。
「アイちゃんとの距離を置けってさ。少しの間とりあえず様子見だな。マネージャーさんには悪いけど…」
「そうだね…あっ!!マネージャーさんに今回の件伝えておかなくきゃ」
ショーは急いで右ボケットの中を探った。
「あの人大丈夫…」
「あれ!?」
「どうした!?」
マゴは寝入りそうな目をはたと開け、体を起こした。
「携帯がない…もしかして、あのアイちゃんの部屋に…」
二人は真夏の夜に、恐ろしい悪寒を感じた。