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孤独なヒーロー達  作者: 林 秀明
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第五十二話 悲しい脱出劇

「ムーブ・ザ・ベンチでやっぱり脱出しよう!!」


ショーはベッドの下でうつ伏せになりながら意気込みを言う。


「さっきと同じじゃないか。掛け声が必要なんだろ?」

マゴは呆れた顔で言う。


「確かにそうだけど…トイレの水が流れる音に乗じて言えば、声がかき消されるかもしれない。タイミングを間違えると危険だけど…」


「他に方法はないのか? 何か…ヒーローからぬ悲しい脱出劇だよ」


「そうだけど、これしかないよ。アイちゃんがシャワーを浴びている今しかないんだ」


マゴはため息をしたがこの方法しかなかった。二人はベッドの下から這い上がると忍び足でお風呂と反対側のトイレに向かう。


「マゴ、手紙手紙」


ショーはマゴに手紙を机に置くように言った。このまま持ち帰ればそれこそ大惨事である。


トイレへ近づくと反対側のお風呂からシャワーの音と何かホップな鼻歌声が混じって聞こえてくる。ガラス窓越しにアイちゃんの裸の半身の姿が見え、二人は覗き犯みたいに見入るように眺めた。


頭が蒸発してくる。だがウルフとリボンの怒っている姿が頭に浮かび、すぐに頭が冷え、トイレへと入る事にした。


「一瞬だぞ。見逃すなよ」


マゴはショーの膝に乗り、流すボタンを押す準備をした。ショーは神経を閉ざし、頭に想像力を働かせる。


「1、2の3で押して。その後に僕が例の言葉を言う!!」


二人は心を落ち着かせ、タイミングを見計らった。アイちゃんがお風呂に入って15分以上は経つ。もうそろそろ出てきてもおかしくはない。


「よし!!そろそろ行くよ。1、2の3!!」

「……ザ……ンチ……!!」


二人は水の音とともに消え去っていた。



「ん!?何!?」


アイは近くから水が流れる音を聞いた。シャワーの音とは違った何かに吸い込まれる音である。シャワーを一旦止め、バスタオルを体に巻きつけ、恐る恐るドアを開ける。


周りには誰もいないが、トイレの中からかすかに水の音が聞こえる。ゆっくりとトイレのドアに手を伸ばし、勢いよくドアを開けた。トイレには誰もいなく、便器の水がちょうど口をすぼめるように水を流していた。


「ここのトイレ…自動で勝手に流れるのかな?」


アイは不思議に思い、風呂場へと戻ったが、あの時のトイレの流れる音だけが妙に頭に響いた。


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