第五十一話 ベッド潜入戦
数秒後部屋の電気が照らされた。スタスタと歩く軽い音とともに長い人影がベッドの隙間から見えた。
「ま‥さか。」
全部言い終える前にマゴはショーの口を閉ざした。言うまでもなく彼女が帰宅したのだ。
「今日も疲れちゃった」
可愛い声が聞こえたかと思うと次に上のベッドがきしむ音が響く。
「インタビューってやっぱり嫌。人の顔窺って本当でないことを答えなくちゃいけないのよね。人間不信になるよ」
再度ベッドがきしむ音が響く。寝返りをうったのだろうか。
「でも、母さんの言葉を信じて私頑張るよ。意固地でわがままだけど、徐々にみんなと仲良…」
「あれ封筒どこ置いたっけ?」
三度ベッドがきしみ、アイが地面に降りる音が響く。封筒はマゴが片手に握っていた。
「ベッドの下…」
アイは呟き、下を覗こうとした。二人は絶対絶命のピンチで覚悟をすでに決めていた。
「なわけないか…お風呂入ろ」
アイはお風呂場へ行き、パサパサと服を脱いだ。シャワーの音が一つの壁をはさんで聞こえてくる。
「あせったな」
マゴは額の汗を拭った。全力疾走後の尋常でない汗が噴きだしている。
「どうしよう」
ショーもまた汗を拭った。冷や汗が脇にたまっているのが体を伝って感じる。
「と、とにかく今のうちに逃げるぞ。正面ドアから…」
「出ていく所を誰かに見つかったらまずいよ。監視カメラもあるかもしれないし」
「じゃあ、ムーブ・ザ・ベンチで…」
「掛け声が必要だよ。声でアイちゃんにばれてしまうかも」
「そしたら俺の能力でロープを出す。窓からロープで外へ…」
「ここ5階だよ。アクションヒーローみたいに出来ないよ」
「ヒーローだろ?」
「…」
少しの間マゴと小競合いをしてしまった。ショーは再度気持ちを入れ替え、脱出方法を考える。それこそアイちゃんが再度戻ってきたらおしまいだ。いっそ風呂覗きをして捕まってしまおうかもと現実逃避になる。
「これしかないな」
ショーは脱出作戦をマゴへ話した。