第四十七話 ドキドキ侵入編③
「ど、どういう事ですか?」
二人は豆鉄砲をくらったかのような顔をしている。
「急ですいません…潜入の話を聞いて、みとれたというか、何か救いの手を差し伸べられたような気がして…」
マネージャーはあせる気持ちを抑え、そこで一旦話を切った。かばんの中から水を取り出し、勢いよく飲み干す。ショーとマゴはただそれを見守るしか出来なかった。
「すいません。実は皆さんもご存知のようにアイは非常にわがままな子なんです。人が困っている事を見て見ぬフリをしたり、人の協力したりもせずに、全部イヤだと言って自分を通すんです。すぐに意固地になって話も聞かなくなってしまう。そんな彼女のマネージャーになってから1年が経ちますが、一向に治らなくて…私自身も困り果てているんです」
マネージャーは少し涙ぐんだ顔をする。余程今までの事が辛かったのだろう。
「でもアイは人気があるので、私は仕事として平然とやっていかなければならないんです。でも苦しくて…アイの内心を探ろうと何度か対話しましたがうまくいかなくて…そこでたまたま二人の会話を聞いて、これだと思ってんです。
「そうなんですか…」
マゴは何か得てがたいような気持ちになった。自分の犯行じみた作戦がこのような展開になるとは思いもしなかった。
「なので今回の作戦に私も加えさせてください。何かアイの本音を探れるようなきっかけになればと思いますんで…」
マゴはショーの顔を見た。ショーもまたマゴの顔を見て、うんと頭を頷かせる。
「わかりました。是非アイちゃんの本音を探れるよう頑張りましょう!!」
マゴはマネージャーと握手をした。マネージャーの手は温かく、そして湿っていた。よほど感情的な気持ちになっていたのだろう。
「…アイは今部屋で休息を取っていると思います。その後18時から1時間ほどのインタビューがありますので、その時に決行してください。あとこれが僕の携帯番号です」
「わかりました。僕の携帯番号も渡しておきます」
ショーはメモ用紙に携帯番号を書き手渡した。
「それでは後2時間ほどでインタビューがあります。僕は準備がありますのでここで失礼します。何度も言うようですが、アイを本当の仕事仲間として支えて頑張りたいんです。宜しくお願いします」
マネージャーはお辞儀をし、部屋を出て行った。
「あのマネージャーさん強いなぁ」
マゴは後姿を見て呟いた。ショーもその姿を見てこくりと頷いた。
二人はいつしかマネージャーを含めたとんでもない作戦を決行する事になった。運命の時間はすでに2時間を切っていた…