第四十三話 ウキウキ?握手会②
鴨橋ホールは握手会開演間近、長蛇の列を期していた。老若男女問わず手に例のチケットを持って今かいまかと待ち受けている。中にはブルーシートを準備している者も居て、一番にアイちゃんに会い、そのファンぶりをアピールしたいのだろう。
「制約がないから、待ってたら会えるよ」
マゴは終始落ち着いた行動を取っていた。
今度はショーはそんなマゴとは対照的に何を話せばいいかと一人ブツブツ考えていた。好きな料理、それともスポーツ? 身だしなみをもう少ししっかりとすればと後悔もした。
そんなショーを見て
「安心しろ、ショーは俺のバックアップをすればいい。俺がアイちゃんを引き入れる」
マゴはゆっくりだが力強い言葉を言った。
時間と共に列は進んでいき、ホール内に入った。ホール内では蛇のように列が右往左往しており、所々に警備員の目が光る。50m先ほどにブースが立っており、中から中年男性がうれしそうな顔をして出てきた。あの場所でアイに会うこと、いやアイを仲間に入れる事が今回の任務なんだ。
「お二人様ですか?」
案内人が笑顔で聞いていた。
「はい。兄弟なんです」
マゴは平然とそう言った。ショーは「ヘ」の顔をする。
「でしたら二人同時に入って下さいね」
「何であんな事言うんだよ?」
「何となくだ。それよりショー。能力でアイちゃんが使っているトイレの位置を確認しとけよ。もしもの時のためにだ」
「何だよそれ」ショーは不安になってきた。少し犯罪染みたにおいがしてくる。