第四十一話 立石サクラ
「ただいまー」
「あら優一、今日は遅かったね。ご飯食べる?」
「うん。食べるよ」
マゴはテーブル席に腰かけ、料理を待つ。お腹がぐぅとなり、今にも悲鳴を上げている。母さんが料理をテーブルへ置いていく。今日はスパゲティーの日だ。最後のお皿を置くと同時に母さんはマゴの向かい側の席へ座った。
「今日ヒーロー部どうだったの?」
母さんはマゴがヒーロー部に入っている事を決して咎めなかった。むしろ誇りとしていい息子を持ったようにさえ持っている。姉が行方不明になってからも…
「また明日から新しい仲間を見つける活動をするよ…危険が多いけどみんなを助けなきゃ」
「そう…あんまり無理なしないでね。私にはあなたしかいないんだから」
母さんはそっとマゴの手を握った。母さんは今年で41歳だが見た目によらず若い。でも手だけは苦労人が味わってきたようなしわくちゃの手をしていた。
「大丈夫無理はしないよ。けど絶対にお姉ちゃんを見つけるから」
マゴは真剣な眼差しで言った。
マゴのお姉ちゃん、立石サクラはヒーロー部に所属していた。才色兼備で活発なサクラはみんなからの人気者でヒーローとしての能力も高く、ホワイト・α団のミカエルに匹敵するほどまでと一時期言われていた。
マゴとも4歳違いの16歳の少女が忽然とある晩からいなくなった。その時はっきりとはわからないが、マゴはお姉ちゃんが黒の幻影団のような奴らに連れ去れるのを夢うつつに見たのだ。そこから1年が経つが何一つとして情報がない。
最後の麺をスルっと口へ滑らし、マゴは自分の部屋へと戻っていた。必ずお姉ちゃんをいつか連れ戻すと信じて。