第四話 ヒーローの依頼
中学校に入って三ヶ月が過ぎ、友達も徐々に出来始めた。クラス内では来週の期末テストに向けた準備で緊張した面持ちで頑張る者やそれを終えた後夏休みをどう過ごすかと悠長に眺めている者で妙な雰囲気になっている。
窓を少し開けると夏の暑い空気とともに蝉の鳴き声が一斉に教室に入り込む。クラスのみんなが一斉に僕の方を向き、「なぜ開けるの?」と無言の視線を促す。
僕はゆっくりと窓を閉め、国語の教科書の夏目漱石「こころ」をゆっくりと読み始めた。平然を装い暮らしてくるのが一番なのだ。
その時携帯が鳴った。僕は教科書から携帯の画面へ視線を移す。
メールが来ており支部からのヒーロー依頼だった。ヒーローの依頼は「本部」や「支部」からの依頼が多く、どこへでも連絡が取れるように現代的な携帯でやりとりしている。
もちろん本部からの依頼は活躍してみんなが知っているヒーローばかりで、名の知れないヒーロー達は支部からの依頼が圧倒的だ。
僕は要請の依頼内容を見る。
「火災現場で閉じ込められている住民を助けよ」
「また火災か……」最近火災が多く、消防車が車道を駆け抜けるのをよく見る。
人手が少ないため、ヒーローも救出の一員として駆り出されるのだ。
僕はため息をつき、教科書をカバンへ押し込めた。
僕は4限目の国語の授業前に体調が悪いと時寺先生に言い、保健室へ向かうことにした。もちろんそのまま保健室へは向かわず、校舎を出て、裏門から現地へ急行することにした。