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第三話 能力
僕は自分の能力が嫌いだ。人には個々の特殊な能力がたくさんあるが、僕がヒーローとして授かった力は「便器間を時空を超えて行き来できる」力だ。
その名の通りトイレの個室にあるあの便器から世界中に設置されているあの便器まで一瞬で移動することが出来る。とても救いようのない力だ。
使用頻度は無制限で例えば東京から大阪まで便器がある場所は自由に行き来出来るが、正直役に立たない。便器がなければ何も出来なく、便器があっても人を救えない。
幸せにする事も出来ない。
むしろその能力を人に公表することで自分が非難をあびる方が強いと思っている。トイレのいじめから覚醒した便器空間移動の能力。人はこう呼ぶだろう、べんきマンと……
だから僕はヒーローを名乗らない。
ヒーローであってヒーローでないような気がする。
いやむしろ人生孤独に生きる孤独のヒーローである。