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孤独なヒーロー達  作者: 林 秀明
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第二十七話 スパイダーの足跡

「いつまで黙っているんだ。白状しろ!!!」


ウルフの部屋中に響く怒鳴り声。ショー達はびくっとした。猿山と大雉の2人は2時間じっくり尋問をしたが、ブラック・i団に入ったばかりで何も聞き出す事は出来なかった。


ウルフは2人を一から徹底的に教育をし、回生を行わせるためヒーロー教育本部へと預ける事にした。残るは玉井ただ一人である。玉井は意識が戻ってからずっと下を向いたまま黙っている。襲ってきた時とは裏腹だ。


玉井は眉ひとつ動かさず一点を集中して見ていた。まるで急に動かなくなった機械人形のようだ。ウルフは玉井の変わらず態度に殴りかかろうとしたが、マゴに抑え込められた。


「先生…じっと待ちましょう」マゴは冷静になだめた。


その日は結局一言も話さず、一日が過ぎた。次の日もその次の日も玉井の態度は変わらず、もしかして死んでいるんじゃないのかと思うくらいだった。諦めかけていた4日目の朝、玉井は涙を流していた。ただただ涙を流していた。そして…


「わたすじゃねぇんだす。わたすは指示に従っただけなんです」

何故か時代劇の百姓みたいな話し方をした。



「どういう事なんだ?」ウルフはかまわず問い詰める。


「子供が好きじゃった。ただ子供も守りたかった…」


「だからどういう事なんだ?」ウルフは声を荒げる。


「ひぃぃいー。すいません。ある日の事じゃった。仕事をしていたら急に仮面の男が現れ、砂を操る力を授かったんじゃ。その力を使い学校を支配し、悪を増幅させろと、さもなくば家族を殺すと…」


「学校の子供たちは殺して良かったのか?」


「すまんかった。生まれたての孫がいて、暮らしは幸せだった。ただ家族を守りたかっただけなんじゃ」

玉井はうるうるとまた泣き出す。


「仮面の男は誰なんだ?」ウルフはさらに問い正す。


「分からない。分からないがそいつは人に能力を分け与える力を持っているらしい。能力を授かった日以来あやつは見ていないんじゃ」


「黒の召喚師か。厄介だな…他にはいねぇのか?」


「あぁ、駄目じゃー。」突如頭を掻きむしり暴れ出す。


「頭がイカれたのか?それとも演技?」ショーとマゴは顔を見合わせた。



ウルフはなんとか落ち着かし、話を切り出した。「どうなんだ?」


「す…スパイダーという奴がいる。話し方が気持悪い奴で悪の組織を拡大するためのパイプ役になっている。そいつが各地を回って侵食を繰り返している」


「スパイダーか…」ウルフは遠くを見つめるように言った。


「まずはそいつを追撃し、黒の召喚師の居所を突き止めばな」


「奴はずるがしこくて悪知恵が働く。関わるのはやめた方がいい」


玉井は淡々と話す。先ほどの百姓はどこへいったのだろう。


「どこにいるんだ?」


「蜘蛛は大勢の人の所へ罠をしかけ獲物を捕る。イベント会場や人が集まりそうな所へ出現する可能性が高い」


「分かった。」ウルフは立ち上がり、ショー達と一緒に部屋を出た。


「あいつはどうするんですか?」マゴは部屋のドアを閉めて言った。


「明日ヒーロー刑務所へ突き出す。あそこなら安全だろう。あの様子を見る限り精神崩壊を起こしている。よほど辛い目か思い出したくない事があるのだろう」

ウルフは少し悲しそうな目で言った。


「これからどうするんですか?」リボンは不安げな様子である。


「まずはスパイダーを探す。奴を追い込めば仮面の男を見つける事が出来るかもしれん。明日から二手に分かれて町の中を捜索だ」


「二手?」ショーは聞き直す。


「そうだ。この学校を中心に俺とリボンで町の西側をショーとマゴで町の東側を探していくんだ。運よく明日から夏休みで部活をする生徒しか来ない。我々の行動もより動きやすくなるだろう」


ショーは感じた。日々自分が大きな運命に関わっていることを…。もう後戻りは出来ない恐怖といつも一人だった自分を救ってくれた仲間と行動できる嬉しさが心の中で混ざり合った。でも僕はヒーローなんだ。やらなくちゃいけない。


「明後日9時に部室へ集合だ。少し作戦を練ってから捜索を開始しよう。明日はゆっくり休め。少しバタバタしてたからな。戦士の休息も時には必要だ。明後日みんなのいい顔を待ってるぞ」


ウルフは一人そう言って帰って行った。


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