第二十六話 遅れてきたヒーロー
「なんとか間に合ったな、昼飯のご飯を大盛にしてたらやばかったな」
「ウルフ!!!!」ショーとマゴは心の奥底から叫んだ。
目の前では玉井達3人が地面に倒れていた。あのワームの化け物もいない。一体数十秒の間で何が起こったんだろう。
「もう大丈夫だ」ウルフはリボンの目隠しとタオルをとった。リボンはウルフの顔を見ると泣き顔になり、ウルフの胸に飛び込んだ。
「先生良かったー、怖かったよー」
リボンは赤ん坊のように号泣した。その様子を見て、ショー達も恐怖から安堵へ変わり、涙を流した。
「先生本当に良かった。生きてて良かった…」
マゴは安堵の表情をみせ、泣いた。先生のいない間責任を持って頑張り続けた。その肩身が解け、安心感が心に広がる。
「心配かけてすまなかった、お前たちも今から縄を解いてやる」
ショー達は少しの間何も喋れなかった。地獄から天国へと救いの天使が降りてきたみたいだ。風が少し出てきてショー達の顔に当たる。乾いた涙に風があたり、気分が落ち着いてきた。
「どうしてここが分かったんですか?」
リボンは落ち着いて聞いた。
「ずっと奴(玉井)を見張っていたんだ。最近の生徒がいなくなっている事件をきっかけにな。その為には奴の目からもそうだが、みんなの目からも抜け出す必要があった。奴は注意深くなかなか隙を見せないからな。そこで俺はみんなの前から姿を消し、機会を窺っていたのだ」
「僕たちだけでも言ってくれれば良かったのに」マゴは言った。
「お前たちにも迷惑がかかるし、この件は容易ではなかった。察してくれ」
「どうやって敵をやっつけたんですか?」
ショーは不思議に思っていた。
「みんなには言っていなかったが、俺の能力は時を操る事が出来る。時を進めたり、戻したり、止めたりな。ただ時の制約時間と一日の使用回数が決められている。それを破ると罰が下されるんだ」
「すごい!!」
ショーは感嘆した。こんなすごい能力のある人なのにどうしてGランクなんだろうとも一瞬考えたが…
「とにかくみんな今日は頑張ったな。このままみんなは帰宅すると言い…俺はこいつらに情報を聞き出す」
ウルフは倒れている3人の方へ向かう。
「厭です。私たちも一緒に手伝います。もう…人がいなくなったり、殺されそうになるのはいや。みんな仲間なんだから…助け合って行きたい」
リボンは涙顔になりながら懇願した。
「分かった。心配かけて本当にすまんな。これからはもう勝手に行かない。行かないよ…」
ウルフはリボンの頭を優しく包み込んだ。
「ショー、マゴ手を貸してくれ。今からこいつらを部室へ閉じ込める。明日朝一ブラック・i団の情報を洗い出しにする。」
「ラジャー!!」
ショー達は兵隊ポーズをとり、猿山達のもとへ向かった。
空は雲なく真っ青に晴れていた。太陽の暑い日差しが自分たちの体を焼きつける。あの輝かしい太陽が世界中の人々を幸せに照らし続ける日がいつか来る。暗い生活から明るく上を向いて歩き続ける世界へ。
今日がその一歩の始まりだ。ウルフは大きく息を吸い込み、太陽に向けて拳を握りしめた。




