第二十二話 異変
「えー、急遽時寺先生に急用ができた為、国語の授業は代わって私がする。先生は当分戻れないそうだ」
代人の加藤先生がそう告げる。ショーが時寺先生と会って一度もない事だ。昨日はそんな素振りはなかったのに。教室中が一瞬ざわついた。
「静かに。我々教師としても正直詳しい事は分からないんだ。また何かあったら連絡する。授業を始めるぞ。教科書の45ページを開いて」
普段通りの普通の授業が再開した。皆一瞬戸惑ったが、特に何もなく平然としている。人間自分以外の事にはあまり関心がないのだ。横目でチラっとリボンを見た。リボンは教科書を開かずに黒板を物思いに見ている。心に衝撃が走り、心の整理が出来ていないのだろう。放課後マゴを加えて話をした方がいい。
「ウルフに何かあったのかな?」
マゴは話を切り出した。リボンはみんなの分のお茶を入れ始める。
「昨日は特に何もなかったのに…。今まではこういった事あったんですか?」
ショーは聞いた。
「いや裏ヒーロー部創設以来一回もない。いつも部室にいてみんなを守ってくれる存在だったんだ。何か危険な目にあった可能性が高い」
「みんなで探しましょうよ。」リボンは一人一人にお茶を出しながら言う。
「そうだな。ただ油断は禁物だ。少し3日くらいは様子を見よう。敵が目を光らせていて罠かもしれない。4日後にここに再度集まって、捜索開始だ」
ショーとリボンは同時に頷いた。マゴは中学校3年生で決断力があり、リーダーとしての存在がある。ショーにとってはお兄さんができたみたいだった。
「よし、じゃあみんなヒーロー携帯は持ってるよな? 何か変わった事があればそれで連絡を取り合うんだ。直接会って会話をする事は極力避けよう。あくまで平然としているんだ」
みんなは携帯を取り出し、連絡の交換をし合った。
翌日ショートルームで担任の木貫先生がクラスの出席をとった。
「最近休みが多いな。今日は1、2、3…6人か。昨日は3人休みだったからな。夏バテが多いから、こまめに水分補給は必ずするんだぞ。今年の夏は例年より暑いみたいだからな」先生は額の汗を拭いながら言った。
ショーも下敷きをパタパタとさせて顔に風を送った。まだ1時限目の前なのにこの暑さは異常だ。太陽が日々地球にどんどんと接近しているようだ。氷を自由に操れるヒーローがそばにいたらと想像してしまう。
異常はこれで終わらなかった。次の日以降クラスの生徒が1、2人、次の日はさらに3人と欠席者が続出した。マゴ達と会う4日目にはクラスの半数が欠席となっていた。
「…何かクラス内で流行病が出ているかもしれんな。お前たち気をつけろよ。今日は授業を休講する。みんな帰っていいぞ」
木貫先生はそう言い、一番乗りで教室をすぐに出た。病気をうつされたくないのだろう。
他の生徒も不安な表情で早く教室を出る。病院に行く者が数名おり、中には点滴を打ってもらうという者もいた。
「玲奈ちゃん」ショーはリボンの顔を見て言った。リボンも状況を察しており、何も言わず頭をこくりとする。2人は教室を出て、裏ヒーロー部部室へ向かった。
この学校に何かが起きている。一体誰の仕業なんだ?