第二十一話 昔の思い出
ショーは自宅へ帰り、両親と晩御飯を食べた。温かい母さんの料理が喉を興奮させ、お腹を満たす。幸せで満足している生活。同じ住んでいる世界なのに一つの使命を持つだけでこれほど気が重くなるのかと感じた。
「またヒーローが悪の手下を倒したみたいだぞ」
父さんがテレビを見ながら興奮気に話す。テレビの中のヒーローはどれほどの期待を背負っているのだろうか。
入浴後、ショーは勉強机に向き合った。英語の宿題が出されており、教科書をパラパラとめくる。
「I have a dream.」キング牧師の有名な一文が目に止まった。
「夢か…」遠く見据える思いでショーは呟いた。机の上には仲の良かった幼馴染みの写真が飾っている。
「あいつどこ行ったんだろう」
写真に写っていたのはショーの親友の火渡亮だ。肩と組んでピースをしている。小学校低学年からの友達でずっと一緒に遊んでいて、いじめられていた時はいつも助けてくれた。
ショーはそんな亮に憧れていて、亮をいつしかヒーローとして見ていたのだ。
「その隣にいるのは…」
風間雫だ。亮との幼馴染みでよく雫とも一緒に遊んだものだ。確か雫が行方不明になってから亮と遊ぶことが少なくなった。そしてあのトイレの事件の日亮は姿を消したのだった…。
「連絡ぐらいくれればいいのに…。俺たち友達じゃなかったのか」
ショーは涙を浮かべた。ずっと一緒だった親しい友人が消えたあの日。自分の体の一部分が突如切り裂かれたような感じだった。その時から友達と接する事が嫌いになり、自分の殻に引きこもるようになった。でも今の自分には居場所がある。今まで自分の人生が止まっていたのを動かしてくれるみんながいる。
ヒーローを始めたのも亮を探し出すためにしたものだ。今度は俺が亮を助け出す番だ。
ショーは静かに心に誓った。