第十八話 裏を引く者
「玲奈!頼んだぞ!」時寺先生が叫ぶ。
「はい!!」
玲奈は掌を返し、息を吹きかけた。その瞬間見えない何かが出現し、少年が落ちる真下に現れた。
「わっ!!」
少年はその何かの上に落ち、跳ね上がって倒れた。下に透明なクッションのマットが置かれているように見えた。
「大丈夫か!?」
先生たちは少年の元へ駆けつけた。
「今…何したの?」翔太は茫然と出来事を見ていた。
「私の能力はシャボン玉を自由に操れることなの。シャボン玉は形や色を自由に変える事ができ、その種類によって能力が異なる。今は透明なシャボン玉のクッションボールを少年が落ちる場所へ出しただけ。人がいっぱいいるからあまり派手な事は出来ないしね」
玲奈はそう言って、攻撃体制のポーズをやめた。
「よし、みんな行くぞ!!」
時寺先生は翔太、玲奈を呼び、少年の元へ向かった。
少年はぐったりとしてはいたが意識はあった。
「何でこんなことをしたんだ?」先生は問い詰めた。
「…」少年は先生の目を見つめたまま黙っていた。
「おい!なんと…」
「死ぬなんて簡単に言っちゃダメ。未来を信じて生きていかなくちゃ。そうしないと私のようになるよ」
玲奈は先生を制して云った。
「…?」
翔太には言葉の意味は分からなかったが、玲奈も何かを背負って闘っているんだなと感じた。
「…助けてくれてありがとう…」
少年はそう言い残し、先生たちと一緒に去って行った。
「あいつ狛犬たちにいじめられてた奴だ。僕と一緒に…」
翔太は沈んだ顔で言った。
「むっ!?」
「先生どうかしたんですか?」翔太は尋ねた。
「さっきの少年の服にこれが付いていてな」
先生はクモの糸を僕たちに見せた。
「少年が飛び降りる時の動きといい、このクモの糸…誰かの故意によって少年が落ちた可能性が高い」
「少年の意志じゃないんですか。それってもしかして…」翔太は背筋がぞっとした。
「あぁ、明日もう一人のヒーロー部員を呼んで、緊急会議を行おう。事態は思ったより深刻だ!!」先生は深刻な顔をした。
その頃…
「どこにバッジを落したんだ!」
「すいません。学校のどこかで無くしてしまいました。もう一度探してきます」狛犬は一度頭を下げ、あわてて出て行った。
「我がブラック・i団の証を…このままではいずればれてしまうぞ」
「うっひひひ…。いいじゃありませんか。どうせこの学校を支配するんですし。そろそろヒーロー達と対面するかもしれませんね。楽しみだですよ」
不気味な笑い声が地下室に響き渡った。