第十七話 自殺志願者
「大変だ。屋上から飛び降り自殺をしようとしている奴がいる。誰か助けてくれ」
時寺先生はその言葉を聞くと、勢いよく立ち上がった。
「おい! みんな行くぞ!!」
「はい!!!」翔太と玲奈は同時に返事をした。
3人は部室を出て、現場へ急行した。
校舎屋上真下の現場は先生と生徒がアリのように群がっていた。現場へ着くと先生方が生徒を説得している姿がまず目に見えた。
「もう警察は呼んだんですか?」時寺先生は現場にいた先生に聞いた。
「もう呼びましたよ。ただ事態は悪く生徒が今にも飛び降りそうなんです。下にマットとか用意しているんですが、うまくいくかどうかは…」
数学担当の寺尾先生は緊迫した面持ちで言った。額から汗が垂れ流れていて困惑を隠せない様子だ。
「そうですか…」時寺先生はみんなと同じ方向に目線を向けた。
校舎3階建ての屋上に少年が一人フェンスを通り越して立っている。太陽が反射し顔はよく見えなかったが、両手を横に広げ、今にも身を投げそうな雰囲気である。
「バカなまねはやめろ。そこから早く離れるんだ。」
時寺先生は大きな声で呼びかけた。
少年は何やらブツブツ言っているが声が小さすぎて聞き取れない。
「さっきからずっとあの調子なんですよ」寺尾先生が言う。
「何か…様子がおかしいな。玲奈用意しておけ」
「はい!!」玲奈は攻撃体制のポーズをとった。
少年の動きが一瞬止まったかと思うと、少年は突然大きな声を出した。
「僕は生きていても意味がないんだ。いっそ死んで楽になった方がいい!!」
その瞬間少年の体は前のめりになり、地面へと落下していった。
「あぁ、危ない!」下にいた一同全員が声を上げた。