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孤独なヒーロー達  作者: 林 秀明
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第十六話 工藤玲奈(りな)

狛犬達の出来事があってから一週間特に何もなく平穏に過ごすことが出来た。平穏な事は良い事だが、まだ他のヒーロー部員に会えていない事が気がかりだった。本当に部員なんているんだろうかと時折疑問に思うこともあった。先生はこのクラスの中に同じヒーローがいると言っていたがとてもそうは思えない。


本当にヒーローがいるなら僕のこの状況をすぐにでも脱してくれるはずだ。だが僕は自分の力で切り開いている。だからヒーローはこのクラスにはいないし、いても大した奴じゃないと思う。


昼休み休憩に入り、翔太は弁当箱を開け、弁当を食べ始めた。周りの生徒は机を引っ付けて友達と食べていたが、いつも翔太は一人だった。


だが翔太にとって学校の中で唯一安息出来る大切な時間であった。大好きな弁当を味わって食べるこの至福の時間が弁当という友達をもった感じがして堪らなく嬉しかったのである。


翔太の右隣の席に同じような奴がいた。


一人で黙々と弁当を食べる眼鏡をかけたショートヘアーの女の子。彼女の名前は工藤玲奈。彼女もまた翔太と同じくずっと一人でいる。このクラスに入ってから彼女が他の子と話しているのをまだ見た事がないし、笑った顔も怒った顔さえも見せない。ただずっと窓の外をぼーと眺めていて、時折鼻歌を歌う変な奴だ。クラスのみんなからも避けられている。


ただはっきりと言えることは夏目漱石のファンである。



前の国語の時間に翔太が夏目漱石「こころ」を音読した時、唯一彼女だけが真剣に聞いてくれた。彼女の真剣な眼差しを見たのはあれが初めてで少しドキっとした。


そんな彼女が裏ヒーロー部の部員だと聞いたのは放課後の事だった。


「水飴紹介するぞ。彼女が裏ヒーロー部の一員の玲奈ちゃんだ」

「えーと、どうも初めまして工藤玲奈と言います。好きな動物は…小鳥です。よろしくお願いします」玲奈はたどたどしい感じで挨拶紹介をした。

「あっ、こちらこそどうも。水飴翔太っていいます。よろしくお願いします」


翔太は玲奈につられてたどたどしく返事をした。


「初めましてっていうか隣の席なんで…。ある程度は知っていると思うんで…」

翔太はそう付け加えた。

「だよね。水飴君いつも一人だからすぐ分かっちゃうもんね」


翔太は少しイラっとしたが、玲奈の純粋な顔を見ると悪気があって言っているわけではないと分かった。少し仲良くなれそうだ。


「お前たち知り合いだったのか、良かったぞ。ヒーロー同士初対面で会うと何かと揉め事が多いからな。以前は校長の銅像が壊れそうになったしな」先生はがっはははと陽気な笑いをみせた。


「工藤さんっていつも一人なんですよね?」

翔太は率直に聞いた。自分も一人だが、彼女はなぜ一人か興味があったのだ。

「うん、幼少の頃から友達がいなくて…ほら、わたしんち規則が多いから」

「規則って?」

「水飴知らないのか? 玲奈ちゃんの家はあの金融業界最大手の工藤財閥の娘で超大金持ちなんだぞ。あとシャボン姫だしな」

「そうなんですか? 何なんですか?」


翔太は驚きと意味が分からないことを同時に言われて困惑した。


「えっと…どこから言えばいいのかな」


玲奈が困った顔をしていると廊下から大きな声がした。


「おーい。誰か助けてくれ~」


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