第百五十二話 極刑の間⑤
「じゃあ決まりね! まかせたわ陽平!」
陽平は小ネズミのようにウルフ達の懐に入り、錠を巧みに外していく。
「陽平の能力は言わば鍵師。陽平に開けれない鍵は無いのよ。私たちが牢屋をすぐに出られたのも、彼のおかげなのよ。もちろん私も陽平に錠を外してもらったわ」
晴子は饒舌に息子の自慢をするが、ウルフ達は取り合わない。もう水が、そこに・・・迫っていた。
「オバハン、どうやって脱出するねん?」
「ほんと生意気なガキね! ったく上の天井窓から脱出出来るわよ。あんたの能力で七尺の脚立の絵を書いてねぇ」
「俺らを助けんと出られへんのわかってたな」
「グチグチ言わないで描く! 時間ないねん! 分かってるでしょ」
ウルフは歯を噛み締めながらスケッチをした。ここで言い争ってもお互いが意味がない。でも腹正しいのは事実だ。
脚立の絵が完成し、陽平、晴子、アイ、ウルフの順に極刑の間の天窓から脱出した。
そこは大きなドーム型の部屋になっており、壁には人体実験に使われるような器具が備え付けられている。遺体を取り扱っていたのか腐敗した臭いが部屋に漂っている。
誰もがなんとなく察知した。この部屋がキマイラ部屋であることを・・・
「アイ・・・この状況あなたは視えてたの?」
晴子の問いかけにアイは弱々しく頭を横に振った。




