第百五十一話 極刑の間④
「私たちって一体誰や?」
ウルフは怪訝な顔をした。
「出ておいで、今は大丈夫だから」
晴子に促され、奥の方から黒い影がにゅっと現れる。そこにはアイに腰を強打された情けない男の顔が見えた。
「陽平! あんたまだいたの?」
アイの痛烈な言葉に陽平は一歩後ずさった。それを制止するように晴子は言葉を続ける。
「息子がした行動は謝るわ。でも助かるためなの。分かるでしょ? た・す・か・る・た・め! その為には人道を外れた事もしなきゃいけない。あなた達を助ける事が神様の行いであっても、死んでしまったら意味がないもん。でもこの施設から脱出させてくれる約束をしてくれるのなら、私たちは神様の行いを喜んでするわ」
「陽平と一緒に連行されたんか?」
ウルフは虚偽の目で見つける。
「ええ」
ウルフは真剣な眼差しで晴子を見つめたが、彼女達の目的が真実か分からなかった。アイの能力が使えない今、本当にアイの能力のありがたみを知る。
「ウルフ! もう水が近くに!!」
水はもう迫っていた。一秒の判断のミスが死に繋がる。
「お前らの約束は守る。けど変な真似は絶対に許さへんで」
ウルフは晴子達と手を取り合うことにした。




