第百五十話 極刑の間③
「一体何が起きてるんや!」
ウルフの大きな声にアイはビクッと目を覚ました。
「水が流れて来てるわ、それも大量にね。しかもフッ化水素が大量に含まれているから、身体が溶けちゃうわね」
「フッか水・・・何やそれ?」
「毒性の強い液体の一種よ。人体に影響を及ぼし、皮膚を溶かす。噂には聞いてたけど、まさかこんな部屋があったとはね」
「感心してる場合じゃないですよ。晴子さん助けて下さい!」
アイは泣き入りながら叫んだ。
「それがダメなのよ。あなた達の手錠を外そうにも鍵がないし、助けを呼ぼうにも部屋を調べ尽くしたけど出口は天井の扉しかない」
水かさがどんどんと増していく。鉄くずは硫酸で一部が溶け、動物と思われる骨は行き場のない幽霊船のようにプカプカと浮いている。
「もうちょっと生きたかったなー」
「やめて!! わたしもっと生きたいのに!」
ウルフとアイの立場が逆転した。ウルフは死にアイは生にしがみつこうとしている。二人は目の前にいる晴子よりも神様の出現を切に願った。
「晴子、助けてあげてもいいわよ。ただし私たちを助けてくれる約束をしてくれたらね」
晴子さんはここぞとばかりに清々しい顔で言った。晴子おばさんは一瞬神様になった。




